2010/5/25

環境・通信・その他

欧州委がICT分野の新戦略公表、オンラインサービスの単一市場創設など

この記事の要約

欧州委員会は19日、EUが向こう10年間の成長戦略「欧州 2020」の柱の1つと位置付ける情報通信技術(ICT)分野の優先課題をまとめた「デジタルアジェンダ」を公表した。EUが重点的に取り組むべき課題として、インターネッ […]

欧州委員会は19日、EUが向こう10年間の成長戦略「欧州 2020」の柱の1つと位置付ける情報通信技術(ICT)分野の優先課題をまとめた「デジタルアジェンダ」を公表した。EUが重点的に取り組むべき課題として、インターネットを利用したさまざまなサービスの普及に向けた単一市場の創設、高速インターネットの普及促進、ICT分野への投資促進など7つの目標を掲げている。欧州委はこれら7つの分野について目標の実現に向けた具体策の検討を進めており、向こう数年のうちに31の法案を含む100前後の施策をまとめる方針を示している。

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欧州委のクルース副委員長(デジタルアジェンダ担当)は声明で「EU市民と産業界の利益を前面に押し出してデジタル革命を推進し、ICT分野の可能性を最大化して雇用創出やソーシャル・インクルージョンを実現する必要がある。今回まとめた野心的な戦略は、今後EUが優先して取り組むべき課題を明確に示している。デジタルアジェンダを実行に移すにはEU加盟国、ICTセクター、関連するすべてのプレーヤーの積極的な関与が不可欠だ」と述べた。

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欧州委は優先課題の1つ目として、オンラインサービス分野における単一市場の創設を挙げている。同分野ではいまだにEU共通のルールが整っていないため、たとえば音楽配信サービスの市場規模は米国の4分の1にとどまっている。欧州委はこうした現状を踏まえ、オンラインコンテンツの合法的な流通促進に向けたEU共通の著作権管理システムやライセンス制度の確立を目指すとしている。

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高速インターネットの普及促進に関しては、2020年までにすべてのEU市民が通信速度30メガビット/秒(Mbps)以上のブロードバンド接続サービスを利用できるようにし、同時に域内の半分の世帯で100Mbps以上のサービスを利用可能とすることを目標に掲げている。欧州委は光ファイバー・インターネット接続サービスの普及率が韓国の15%、日本の12%に対し、EUは1%にとどまっている点に触れ、経済成長の前提となる高速インターネット網の構築に向けた投資促進策を早急に検討する意向を示している。

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欧州委はさらに、EUが国際社会で競争力を維持するにはICT分野における研究・開発(R&D)への投資を大幅に増やす必要があると指摘。同分野におけるEUの投資額が米国の約4割(2007年実績で米国の880億ユーロに対し、EU全体で370億ユーロ)にとどまる点に触れ、官民双方でR&D投資を促進する必要があると強調している。

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デジタルアジェンダにはこのほか◇ICT分野の製品およびサービスの規格統一と互換性の確保◇サイバー攻撃への対抗策や個人情報保護ルールの整備など、オンラインサービスの普及にあたり前提となるセキュリティ面の強化◇すべてのEU市民がインターネットを介して医療、教育、買い物などのサービスを利用できるようにするための基盤づくり◇2015年までにEU全域で電子カルテを実用化するなど、ICTの社会的な利用の促進――が盛り込まれている。

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