2010/5/31

産業・貿易

EU域外国が半年で73件の貿易障壁、経済危機対策の恒久化に警戒感

この記事の要約

欧州委員会は28日、金融危機が深刻化した2008年10月から今年4月までの1年半にEUの主な貿易相手国によって合わせて278件の貿易制限的措置が導入され、このうち73件が過去半年間に新たに発動されたとの報告書を公表した。 […]

欧州委員会は28日、金融危機が深刻化した2008年10月から今年4月までの1年半にEUの主な貿易相手国によって合わせて278件の貿易制限的措置が導入され、このうち73件が過去半年間に新たに発動されたとの報告書を公表した。欧州委は世界経済に回復の兆しが見え始めているにもかかわらず、経済危機への対応策として導入された関税引き上げなどの保護主義的な措置がほとんど解除されていない事態を問題視し、貿易相手国に対して政策の見直しを強く求める意向を示している。

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欧州委のデフフト委員(通商担当)は声明で「経済が本格的な回復基調に入っても、金融危機の間に導入された措置がそのまま定着する危険性がある。保護主義からの出口戦略を模索しなければならない」と強調した。

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欧州委によると、日本、米国、中国、インド、ロシア、ブラジル、韓国、オーストラリア、カナダなど30カ国が発動した貿易障壁措置のため、EUは過去半年に輸出額の約1.7%が影響を受けた。世界貿易機構(WTO)は保護主義的措置がG20構成国の輸出額に与えた影響はおよそ0.7%と試算しており、EUは2倍以上の打撃を受けたことになる。欧州委は景気が回復に向かっても失業者はさらに増えるリスクがあり、そうなればEUはもう一段の保護主義政策に直面する可能性もあると警告している。

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報告書によると、昨年11月から今年4月までに解除された措置は18件にとどまり、4月末時点の貿易障壁は半年前に比べて55件増加した。発動件数(278件)を国別にみると、ロシア(56件)、アルゼンチン(53件)、インドネシア(34件)の3カ国が全体の半分以上を占めている。このほかでは米国と中国が共に17件、韓国は9件、日本は4件となっている。

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報告書はロシアが今年1月にカザフスタン、ベラルーシと共に関税同盟を創設し、経済危機の間に導入した関税引き上げなどの措置をそのまま維持している点を問題視。「輸出の回復を見込んで危機対応の措置を恒久化した最も顕著な例」と批判している。さらに自国製品を保護するための輸入禁止措置や政府調達における外国製品の締め出しなどが依然として広く行われていると指摘。特にG20構成国は保護主義排除の公約を確実に実行する必要があると強調している。

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