2010/7/26

産業・貿易

エアバス「違法補助金」でEUが上訴、ボーイング向け中間報告は9月に

この記事の要約

航空機メーカーへの補助金をめぐる欧米間の通商紛争で、欧州委員会は21日、エアバスに対するEU加盟国の資金支援を違法と認定した世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)の裁定を不服としてWTO上級委員会に上訴したと […]

航空機メーカーへの補助金をめぐる欧米間の通商紛争で、欧州委員会は21日、エアバスに対するEU加盟国の資金支援を違法と認定した世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)の裁定を不服としてWTO上級委員会に上訴したと発表した。協定により上級委員会は90日以内にパネルの裁定が適切であったかどうかを評価し、WTOとしての最終判断を下すことになっている。しかし、航空機補助金をめぐる問題はWTOを舞台とする通商紛争で最も複雑かつ大規模なものであり、さらにEUが米国を提訴しているボーイングへの資金支援に関するパネルの中間報告が当初予定の7月から9月中旬に延期された事情もあるため、市場では最終的な裁定は来年にずれ込むとの見方が出ている。

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6月末に公表されたパネル報告は、エアバスの超大型旅客機「A380」の開発支援を目的としたEU主要国による資金援助の一部がWTO協定で禁止された輸出補助金にあたると認定し、90日以内に是正措置を講じるよう勧告した。具体的には英、独、スペイン政府による超低利融資のほか、仏政府による組立工場の用地提供や、独・スペイン政府による自国工場の建設費助成などがWTOルールに抵触するとしている。

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欧州委はパネル報告の中で◇EU加盟国によるA380の開発支援を輸出補助金と位置づけている◇エアバスに対する補助金とボーイングの業績悪化の間に因果関係があると結論づけている◇ハンブルク、ブレーメン、トゥールーズ工場に関連したインフラ整備について、エアバスが適正な使用料を支払っているにもかかわらず、独・仏政府による違法な補助金とみなしている――の3点について、パネルの判断は誤っていると主張している。デフフト委員(通商担当)は声明で「航空機補助金をめぐる紛争は極めて重要な問題であり、パネルの誤った法解釈を見過ごすことはできない。ここで上訴しなければすべてのWTO加盟国にとって助けにならない前例が残ることになる」と強調。上級委員会に裁定の見直しを求める考えを示した。

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