2010/8/2

産業・貿易

CESRが証券取引規制の改革案提言、透明性向上と投資家保護に主眼

この記事の要約

EUの欧州証券規制当局委員会(CESR)は7月29日、証券市場の透明性向上に主眼を置いた金融商品市場指令(MiFID)の見直し案をまとめた。取引所外取引の促進などにより細分化が進む証券市場の透明性を高め、投資家保護を強化 […]

EUの欧州証券規制当局委員会(CESR)は7月29日、証券市場の透明性向上に主眼を置いた金融商品市場指令(MiFID)の見直し案をまとめた。取引所外取引の促進などにより細分化が進む証券市場の透明性を高め、投資家保護を強化するため、各市場での取引情報を統合して取引価格や取引量などのデータを一括管理する「統合取引報告(consolidated tape)」システムを構築することなどを欧州委員会に提言している。

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EUでは資本市場および投資サービスの基本法と位置付けられるMiFIDが2007年11月に施行された。本国の当局から認可されていればEU全域で国境を越えて活動できる「共通パスポート」制度の導入により、証券取引所や多角的取引機構(MTFs)、投資会社などの間で競争が促進され、資本調達コストの低下といった効果が出始めている。その一方で、すべての市場で実行された取引の価格や数量などの情報を一括管理する仕組みが整備されていないため、特に取引所外取引の透明性が十分に確保されないなどの問題も浮き彫りになった。CESRはこうした現状を踏まえてMiFIDについて本格的な見直しに着手し、株式および株式以外の金融商品の取引市場における透明性、投資家保護、取引報告のあり方などについて提言をまとめた。

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CESRはまず、株式の取引情報の透明性要件に関連して、EUレベルで取引の価格や数量などの「取引後」データを統合する仕組みを構築する必要があると指摘。業界の自主規制に委ねるのではなく、MiFIDの中で統合取引報告システムの具体的な枠組みを規定するよう提言している。また現行の透明性要件は維持したまま、情報開示の遅れに対する規制を導入するなどして取引後データの質向上を図る必要があると指摘している。

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さらに金融市場の秩序だった機能を維持するため、CESRは新たに電話や電子メールなどの通信手段による取引注文の記録に関する共通ルールの導入を勧告している。具体的にはMiFIDがカバーするすべての金融取引が規制の対象となり、取引注文の記録を少なくとも5年間保持することや、投資会社の従業員が会社の電話やパソコン以外で取引注文を受けることを禁止するなどを提案している。ただ、銀行の業界団体はこうしたルールの導入に強く反発しており、ドイツやオーストリアの金融当局も取引状況を監視する上でのメリットに比べて投資会社などの負担が大きすぎるとして規制に難色を示している。

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このほかすべての金融商品に株式と同様の報告義務を課すことや、証券取引所などを通さず、取引当事者同士が直接交渉して価格を決定して取引を成立させる「ダークプール」と呼ばれる取引環境(たとえば銀行などが運営する非公開の私設電子取引所)に対する規制の強化などが提言書に盛り込まれている。

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