2010/8/2

産業・貿易

欧州委が原材料92品目の関税引き下げ検討、加盟国間で意見対立

この記事の要約

欧州委員会がイタリアの提案を受け、原材料を中心に幅広い品目について輸入関税の一時的な引き下げを検討しているもようだ。ロイター通信によると、欧州委は現在、合わせて92品目を関税引き下げの対象としてリストアップしており、加盟 […]

欧州委員会がイタリアの提案を受け、原材料を中心に幅広い品目について輸入関税の一時的な引き下げを検討しているもようだ。ロイター通信によると、欧州委は現在、合わせて92品目を関税引き下げの対象としてリストアップしており、加盟国との交渉で過半数の支持を得られれば、今秋にも正式にリストを提示して採決を求めるものとみられる。ただ、英国やオランダなどが関税の引き下げを支持する一方、フランス、ドイツ、スペインなどは強く反対しているとされ、調整は難航が予想される。

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イタリアは経済危機の影響で苦境に立つ域内の製造業を保護するため、今年に入り欧州委に原材料などの輸入関税を一時的に引き下げるよう提案した。これを受けて欧州委は加盟国に意見を求め、それを基に関税引き下げの対象リストを作成。ロイター通信によると、鉄鋼、化粧品、繊維、家具、自動車などさまざまな分野の92品目がリストに含まれている。イタリアは中国、ブラジル、ロシアなどから輸入される原材料や部品に対する関税が引き下げられた場合、域内の企業にとって年間20億ユーロのコスト削減につながると試算している。経済開発省のサレミ報道官はロイターの取材に対し「関税引き下げによって域内の製造業者は域外のライバルと同じ価格で素材を調達することが可能になり、企業に加えて消費者も恩恵を受けることになる」とコメントした。

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工業製品の原材料をめぐっては、米国、カナダ、ブラジルなどでも輸入関税の引き下げが検討されている。同措置により、安価な原料を輸入して付加価値の高い製品に加工し、それを輸出する先進国や新興工業国の利益は拡大するが、原料を輸出する途上国の反発を招くおそれがある。このため欧州委は加盟国の間で事前に妥協点を見出せなければ正式な提案は行わない方針を示している。

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