2010/8/23

産業・貿易

欧州委が「EU税」の導入検討、CO2排出枠のオークション収入など候補に

この記事の要約

欧州委員会は増大するEU予算の財源を確保するため、新たに「EU税」を創設する方向で検討に入った。欧州委のレバンドフスキ委員(財政計画・予算担当)が今月9日、フィナンシャルタイムズ・ドイツ版(FTD)に対して明らかにした。 […]

欧州委員会は増大するEU予算の財源を確保するため、新たに「EU税」を創設する方向で検討に入った。欧州委のレバンドフスキ委員(財政計画・予算担当)が今月9日、フィナンシャルタイムズ・ドイツ版(FTD)に対して明らかにした。具体的には金融取引、二酸化炭素(CO2)排出量取引における排出権の有償入札、航空運賃などへの課税が検討されており、同委員は9月中に新税の構想を正式に提案する方針を示している。

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EU予算は主に加盟国の分担金と関税を中心とする「固有財源」で賄われている。1988年には固有財源が歳入の89%を占めていたが、予算の拡大に伴いこの比重が低下。域内総生産の約1%に相当するおよそ1,400億ユーロの年間予算に占める固有財源の割合は4分の1まで縮小し、代わりに加盟国の分担金への依存度が高まっている。しかし、世界的な金融・経済危機をきっかけに、ユーロ圏を中心に各国で財政悪化が深刻化。欧州委はこうした現状を踏まえ、加盟国の負担を減らしながら確実に財源を確保するため、2014年-20年までの中期予算計画の策定に合わせて新税の導入準備を進めていた。

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レバンドフスキ委員はFTD紙に対し「加盟国の財政を圧迫せずに財源を確保する方法はいろいろある」と指摘。課税対象として2013から導入されるオークション方式によるCO2排出枠の有償配分で得られる収入や、国際送金にかかる手数料収入などを挙げ、「新税の導入により多額の税収が得られる可能性がある」と述べた。

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EU税の導入構想に対してドイツ、英国、フランスなど主要国は揃って反対の姿勢を示している。独財務省の報道官はレバンドフスキ委員の発言を受け、「EU共通税やEU主導による新税の導入は連立合意に反する」とコメント。サッスーン英財務閣外相も「税制は加盟国が国レベルで決定すべき問題だ」と述べ、欧州委の提案に反対する意向を表明した。さらにフランスのルルーシュ欧州問題担当閣外相はAFP通信に対し、「現時点ではいかなる新税も歓迎できない」と発言。新税の導入は税制に関する各国の主権をEUに委譲することを意味すると指摘し、「根本的な政治問題を引き起こすことになる」とけん制した。

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