2010/8/23

産業・貿易

欧州委、金融コングロマリット指令の改正案発表

この記事の要約

欧州委員会は16日、EU域内で銀行部門と保険部門の両方を保有する大手金融グループに対する規制を定めた「金融コングロマリット指令」の改正案を発表した。各国金融当局の権限を強化して、業態の異なる複数の金融機関から成る金融コン […]

欧州委員会は16日、EU域内で銀行部門と保険部門の両方を保有する大手金融グループに対する規制を定めた「金融コングロマリット指令」の改正案を発表した。各国金融当局の権限を強化して、業態の異なる複数の金融機関から成る金融コングロマリットに対する包括的な監督体制を整備し、金融危機の再発防止に役立てる。 EU加盟国と欧州議会の承認を経て2011年の導入を目指す。

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2002年に採択された金融コングロマリット指令は、それまで業態別に監督されていた金融グループに包括的な規制の網をかけることで、金融システムの安定化と顧客保護を図ることを最大の目的としている。具体的には銀行業または証券業のいずれかを営む企業と保険業を営む企業の双方を傘下に持ち、銀行・証券・保険のいずれかを営む企業がグループの最上位を占めるなどの要件を満たした企業グループを金融コングロマリットと定義。金融コングロマリットと認定された金融グループには業態ごとの規制に加え、グループ全体の自己資本レベルやリスクの集中度などについて補足的な監督ルールが適用されている。

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しかし、2008年の金融危機を受けて欧州委が金融機関に対する規制について徹底した見直しを行った結果、現行の金融コングロマリット指令には抜け穴が多く、複雑な組織構造のため複数市場で活動する金融グループに対して各国当局が十分に権限を行使できていない現状が浮き彫りになった。このため欧州委は関係する各方面と協議しながら金融コングロマリットに対する監督強化の具体策を検討していた。

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欧州委案によると、各国当局には銀行部門と保険部門を横断的に監督する権限が付与され、業態の異なる複数の金融機関を傘下に置く親会社(持ち株会社など)に対する監督体制が強化される。たとえば銀行業務を扱う金融グループが保険会社を買収した場合、親会社は引き続き銀行監督当局の管轄化に置かれる。逆に保険会社が銀行業務に参入した場合も同様に、保険監督当局が引き続きグループ全体を監督する。欧州委は同措置により、各国当局は親会社と子会社が同一資本を重複して自己資本の算出に用いるといったケースを厳しく監視することが可能になり、常にグループ全体のリスクを把握して問題が生じた場合は早い段階で有効な対策を講じることができると説明している。

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新ルールは独アリアンツや英オールド・ミューチュアルなどEU域内に本社を置く57の金融グループに加え、域内で活動する日本や米国など第3国に本社を置く金融グループにも適用される。一方、グループの総資産が600億ユーロ未満の場合は補足的監督ルールの適用が除外される。

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