2010/8/23

産業・貿易

アザラシ製品の禁輸ルール、発効前日に暫定的差し止め命令

この記事の要約

欧州司法裁判所の一般裁判所は19日、EU域内へのアザラシ製品の輸入を禁止する新たな法律を暫定的に差し止める決定を下した。禁輸ルールは翌20日に発効したが、欧州委員会は判決を受け、カナダの先住民族イヌイットの団体など訴訟に […]

欧州司法裁判所の一般裁判所は19日、EU域内へのアザラシ製品の輸入を禁止する新たな法律を暫定的に差し止める決定を下した。禁輸ルールは翌20日に発効したが、欧州委員会は判決を受け、カナダの先住民族イヌイットの団体など訴訟に参加した団体に関しては、正式決定まで例外的に輸出を認める方針を表明した。一般裁判所は9月7日以降に聴聞会を開き、禁輸ルールの妥当性について改めて審理する見通し。同措置をめぐっては、アザラシ猟が盛んなカナダなどが不当な輸入制限にあたるとして世界貿易機関(WTO)に提訴しており、今回の判決を機に関係国がEUに対する圧力を強める可能性もある。

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EUは撲殺など残虐な手法が用いられるアザラシ猟に対する国際的な批判が強まっていることを受け、昨年7月にアザラシの毛皮、肉、油脂などや、それらを用いたあらゆる製品の輸入を禁止する法案を採択した。カナダやグリーンランドなどで先住民族が自給のため伝統的な方法で行うアザラシ猟による製品は、例外として域内への輸入が認められることになっているが、イヌイットの団体などはEUの不当な貿易制限によってアザラシ製品の市場規模が縮小し、生活が脅かされるとして一般裁判所に提訴していた。

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欧州委のコッコネン報道官は判決を受け、「アザラシ製品の禁輸措置は予定通りに執行される。ただし、一般裁判所が訴訟に関与するすべての当事者から意見を聞く機会を設けるまで、原告側の団体については同措置を適用しない」との声明を発表。欧州理事会と欧州議会に対し、9月7日までに判決に対する見解をまとめるよう求めた。これに対し、イヌイット団体Inuit Tapiriit Kanatami(ITK)の法定代理人を務めるヤン・ブッケルト氏は「EUの禁輸ルールは暫定的に差し止められた」と強調。禁輸差し止めは原告団以外にも適用されなければならないと反論している。また、ITKのマリー・サイモン会長は声明で「アザラシ製品の禁輸措置は違法でありモラルに反する。今回の判決はイヌイットや他の原告団がEUの決定に反対する本質的な理由を裁判所が十分に理解していることを示すものだ」と指摘。欧州議会に対して禁輸ルールを取り下げるよう呼びかけた。

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