2010/10/25

総合 –EUウオッチャー

欧州委が「EU税」導入を表明、域内共通の法人税など候補に

この記事の要約

欧州委員会は19日、EU予算の財源を確保するため、EU域内共通の新税を導入する意向を表明した。加盟国の分担金に依存する体質の改善が目的。「EU税」とも呼べる新税の候補としては、EU法人税などが挙っている。欧州委は2011 […]

欧州委員会は19日、EU予算の財源を確保するため、EU域内共通の新税を導入する意向を表明した。加盟国の分担金に依存する体質の改善が目的。「EU税」とも呼べる新税の候補としては、EU法人税などが挙っている。欧州委は2011年7月までに詳細を詰め、法制化に向けた正式提案を行う方針だ。

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EU予算は主に加盟国の分担金と、関税を中心とする「固有財源」で賄われている。1988年には固有財源が歳入の89%を占めていたが、予算の拡大に伴いこの比重が低下。年間予算に占める固有財源の割合は4分の1まで縮小し、代わりに加盟国の分担金への依存度が高まっている。しかし、世界的な金融・経済危機をきっかけに、各国で財政が悪化していることから、欧州委は独自財源を確保して加盟国の負担を減らす方策を検討していた。

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欧州委が新税の候補としているのは、EU共通の法人税、付加価値税(VAT)、エネルギー税、航空税、金融活動税、国際金融取引税、二酸化炭素(CO2)排出量取引における排出権の有償入札への課税など。バローゾ委員長は「(加盟国の)歳出が抑制される中、直面する試練に立ち向かうために必要なEU予算のあり方を提案した」と述べ、「EU税」構想実現への理解を求めた。

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欧州委はEU次期中期予算(対象期間:2014~20年)計画の策定に合わせて、新税構想を検討する。しかし、EU予算への拠出が大きい主要国の英国、ドイツ、フランスは、EU独自財源の確保は国家の徴税権を侵害するなどとして難色を示しており、フランスのピエール・ルルーシュ欧州問題担当相は即座に「時期が悪すぎる。代わりに予算の節減を目指すべきだ」と述べ、EU税導入への反対を表明した。EUでは税制に関する政策決定は加盟国の全会一致で決める必要があることから、同構想実現への道のりは険しそうだ。

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