2010/10/25

環境・通信・その他

食用クローン家畜製品を5年間停止、欧州委が提案

この記事の要約

欧州委員会は19日、クローン技術で生まれた家畜を利用した肉や乳などの食品の製造を5年間停止する暫定措置を提案すると発表した。クローン家畜の利用や同家畜由来の食品の販売も停止する計画で、生きたクローン家畜の輸入も対象となる […]

欧州委員会は19日、クローン技術で生まれた家畜を利用した肉や乳などの食品の製造を5年間停止する暫定措置を提案すると発表した。クローン家畜の利用や同家畜由来の食品の販売も停止する計画で、生きたクローン家畜の輸入も対象となる。停止措置は5年後に見直しを行う。欧州委は来年に新ルールを定めた法案をまとめる予定だ。

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今回の措置では、研究目的や絶滅の危機にある種の保存、医薬品生産用ではクローン技術の利用を認める。またクローン家畜の精液や胚の輸入については追跡システムを確立する条件で輸入を認めるため、クローン家畜の子孫由来の食品の生産・販売は許容されることになる。クローン家畜の子孫に由来する米国などからの食品輸入についても制限はない。

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欧州委は停止の理由として動物福祉を挙げており、クローン家畜の子孫に由来した食品の禁輸は不必要なうえ国際貿易を阻害すると説明。欧州委のダッリ委員(保健・消費者政策担当担当)は「クローン家畜由来の食品は安全で科学的見解では通常の家畜との違いはない。問題となるのは動物福祉」としている。また、クローン家畜の子孫由来の食品には動物福祉の問題はないうえ追跡できないため、販売や輸入の禁止は不可能という。クローン家畜の利用が進んでいる米国ではクローン家畜由来の食品の販売は自主的に停止されているものの、その子孫由来の食品は自由に流通している。このため米国だけでなく世界各地で食品チェーンの中にすでに入り込んでいる。

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クローン家畜をめぐっては、欧州食品安全庁(EFSA)が2008年7月にクローン家畜の肉や乳について危険性は確認できないと表明。ただEUの科学アドバイザーは、クローン家畜や代理母には動物の健康上や福祉の面で大きな問題があると指摘していた。これに対して欧州議会は2008年9月、食用のクローン家畜の生産・輸入の禁止を求める決議を採択し、2009年には担当相理事会が欧州委に報告書をまとめて措置を検討するよう要請。ダッリ委員は今年初めに欧州議会で、年内に報告することを約束していた。

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EU域内ではデンマークだけが商業目的による動物のクローン技術利用を禁じている。ただ欧州議会は今年7月にもクローン家畜およびその子孫由来の食品について全面禁止を求めており、欧州委員会の提案に対しても反対する可能性が強い。

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