2010/11/1

総合 –EUウオッチャー

セルビアの加盟手続き開始、EU外相理が承認

この記事の要約

EU加盟国は10月25日にルクセンブルクで開いた外相理事会で、セルビアのEU加盟申請を受理し、欧州委員会に加盟に向けた手続きに入るよう求めることを決めた。これによりセルビアは悲願のEU加盟へ一歩前進した。\ セルビアは2 […]

EU加盟国は10月25日にルクセンブルクで開いた外相理事会で、セルビアのEU加盟申請を受理し、欧州委員会に加盟に向けた手続きに入るよう求めることを決めた。これによりセルビアは悲願のEU加盟へ一歩前進した。

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セルビアは2008年にEU加盟の前段階である「安定化・連合協定(SAA)」を締結。2009年12月に加盟を正式申請していた。受理を経て、次のステップとなるのは加盟候補国としての認定と加盟交渉開始。欧州委は今後、セルビアが政治・経済改革や法整備などの面で加盟候補国となる資格を満たしているかどうかを審査し、候補国認定の可否を加盟国に勧告する。EU筋によると、勧告が出るのは2011年下期となる見通しという。

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セルビアのEU加盟をめぐっては、ボスニア紛争時の戦犯として旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)から訴追されているムラジッチ被告(元セルビア軍司令官)、ハジッチ被告(セルビア人勢力元政治指導者)という2人の大物戦犯を政府が逮捕できていないことが手続きを進める上での大きな障害となってきた。

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両被告は現在も逃亡を続けているが、もうひとつの課題であるコソボがセルビアからの独立を一方的に宣言した問題で、セルビアが7月に強硬姿勢を少し軟化させ、EUによる仲介のもとでコソボと対話を行い、問題解決を目指す方針を打ち出したことを評価し、外相理事会は手続きを進めることで合意した。

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ただ、戦犯逮捕の問題は今後もセルビアに大きな課題としてのしかかってくる。加盟候補国認定、加盟交渉開始といった節目の決定は、加盟国による全会一致の承認が必要となるが、そのたびごとに政府が戦犯逮捕に十分な努力をしているかどうかを検証される。外相理も議長総括に「今後のステップは、セルビアが(戦犯逮捕に向け)ICTYに全面的に協力していると全加盟国が判断してから決める」という文言を盛り込んだ。

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加盟国の中ではオランダが、ムラジッチ被告が関わったとされるスレブレニツァのムスリム系住民大量虐殺事件で現地にオランダ軍が駐屯していながら制止できず、国際的非難を浴びた因縁があることからセルビアに厳しい。セルビアは2012年の加盟交渉開始、2014または15年の正式加盟を目標としているが、両戦犯を逮捕しないと重要な局面でオランダに拒否権を行使され、加盟手続きがずれ込む恐れがある。

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EUは現在、クロアチア、トルコ、マケドニア、アイスランドを加盟候補国として正式に認定。うちマケドニアを除く3カ国と加盟交渉を開始している。

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