2010/11/15

総合 –EUウオッチャー

アイルランドなどの国債利回り急上昇、欧州信用不安が再燃

この記事の要約

ギリシャを震源地とした欧州の信用不安が再燃し始めた。ギリシャと同じく財政危機が深刻なアイルランド、ポルトガルで国債利回りが急上昇しているためで、両国がギリシャに続いてEUや国際通貨基金(IMF)に金融支援を求める事態に追 […]

ギリシャを震源地とした欧州の信用不安が再燃し始めた。ギリシャと同じく財政危機が深刻なアイルランド、ポルトガルで国債利回りが急上昇しているためで、両国がギリシャに続いてEUや国際通貨基金(IMF)に金融支援を求める事態に追い込まれかねないとの懸念が浮上している。

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アイルランドでは9月から国債利回りが上昇を続けている。政府が同月、昨年に国有化したアングロ・アイリッシュ銀行など経営難に直面する国内銀行に新たに巨額の公的資金を注入する計画を発表。これにより2010年の財政赤字は当初見込みの国内総生産(GDP)比12%から32%まで上昇する見通しとなったためだ。

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これに追い討ちをかけたのが、EUが10月末の首脳会議で合意した、財政危機に陥ったユーロ参加国に対して緊急金融支援制度を常設するという案をめぐり、ドイツとフランスが対象国の国債保有者にも一定の負担を迫ることを打ち出したことだ。これを受けて投資家がアイルランド国債の購入に慎重になり利回り上昇が加速。さらに10日になって欧州有数の清算・決済機関であるLCHクリアネットが、アイルランド国債を取引する際の証拠金の15%増額を発表したことで投資家の不安が増幅し、10年物国債の利回りは一時、8.64%まで上昇し、ユーロ導入後の最高値を更新した。

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こうした動きはポルトガルにも波及。同国では今月初めに厳しい財政緊縮案が議会を通過したにもかかわらず、10日に実施した10年物国債の入札で、利回りはユーロ導入後の最高水準に達した。

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アイルランド政府は「財政再建を進めておりEUなどに支援を要請するつもりはない」としているが、国債の利回りの急上昇は償還コストを大きく膨らませ、財政を一段と圧迫することになる。EU主要5カ国の独、仏、英、伊、スペインの財務相は12日、市場の混乱を抑えるため、新たな金融支援制度の創設は2013年半ばになってからで、それまでは現行の枠組みのもとでアイルランドを救済することが可能と強調する共同声明を発表。これを受けてアイルランドなど欧州の国債の利回りは同日に急低下した。それでも市場では、アイルランドがデフォルト(債務不履行)に陥ることへの警戒感がくすぶっており、信用不安が続きそうな状況だ。

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