2010/11/15

総合 –EUウオッチャー

欧州委がエネルギー新戦略を発表、省エネや市場統合など優先課題に

この記事の要約

欧州委員会は10日、競争力のある持続可能で安定したエネルギー政策を実現するための新戦略を発表した。「エネルギー2020」と題する政策文書の中で、EUが取り組むべき向こう10年間の優先課題として省エネや域内におけるエネルギ […]

欧州委員会は10日、競争力のある持続可能で安定したエネルギー政策を実現するための新戦略を発表した。「エネルギー2020」と題する政策文書の中で、EUが取り組むべき向こう10年間の優先課題として省エネや域内におけるエネルギー市場の統合など5項目を挙げ、それぞれの課題に対処するための具体策を提案している。EU加盟国は来年2月に開催される「EUエネルギーサミット」で欧州委の提案について協議する。

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欧州委のエッティンガー委員(エネルギー担当)は声明で「エネルギー問題は我々が直面する最も重大な試練の1つだ。持続可能でより安定的なエネルギー供給システムの確立には時間がかかるが、今こそ野心的な決定を下す必要がある。効率的で競争力のある低炭素経済の実現に向けて最優先の課題に取り組み、EUがエネルギー政策で主導権を握らなければならない」と述べた。

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欧州委が挙げた優先課題は◇省エネの推進◇エネルギー市場の統合とインフラ整備◇エネルギー関連技術における主導権の確保◇対外エネルギー政策の強化◇低価格で安定したエネルギー供給の実現――の5項目。

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まず省エネに関しては、輸送と建築物の両分野でエネルギー消費を大幅に削減できる余地があると指摘。特に省エネを目的とした個人や中小企業による家屋や建物の改装などを促すため、2011年半ばまでに具体的な投資奨励策をまとめる方針を示している。

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エネルギー市場の統合に関しては、域内で送電・送ガス網の相互接続を推進するとともに、向こう10年間に1兆ユーロを投じて域内全体をカバーするエネルギー網を整備する必要があると指摘している。また、エネルギー分野でEUが競争力を高めるため、スマートグリッドや次世代バイオ燃料などの研究・開発でEUが主導権を握る必要があると強調。さらにロシアをはじめとするエネルギー供給国との交渉を優位に進めるため、EU共通の対外エネルギー政策を確立すると同時に、アフリカなどとの協力関係を強化する必要があると指摘している。

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エッティンガー委員は会見で、EUが掲げる温暖化対策の数値目標のうち、2020年までに◇温室効果ガス排出量を1990年比で20%削減する◇再生可能エネルギーの利用比率を20%まで高める――の2つについては達成可能であるものの、現状ではエネルギー効率を20%改善するという目標の達成は難しいと分析。目標達成には省エネ技術への大規模な投資とEU加盟国の一致した政治的意志が不可欠だと強調した。

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