2010/12/6

競争法

欧州委がINGの永久劣後債コールを阻止、公的資金の未完済で

この記事の要約

欧州委員会は11月30日、オランダの大手金融グループINGがハイブリッド資本(永久劣後債)を発行して個人投資家から調達した12億ユーロに上る資金の期限前償還(コール)を認めない方針を決定した。欧州委はオランダ政府による1 […]

欧州委員会は11月30日、オランダの大手金融グループINGがハイブリッド資本(永久劣後債)を発行して個人投資家から調達した12億ユーロに上る資金の期限前償還(コール)を認めない方針を決定した。欧州委はオランダ政府による100億ユーロの資本注入を柱とするINGの再建策を承認する際、公的資金の返済を最優先することを条件の1つとしていたが、同行がこれまでに返済した補助金は50億ユーロにとどまるため、個人投資家からハイブリッド資本の形で調達した資金を償還期限を待たずに返済することは認められないと結論づけた。

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INGは金融危機の影響で急速に経営が悪化し、2008年10月に政府から100億ユーロの資本注入と並行して、流動性の確保を目的とする120億ユーロの政府保証を受けた。さらに政府は09年初め、390億ユーロに上る非流動資産の80%をカバーする保証プログラムを策定。INGは政府との間で、資本注入のうち半額の50億ユーロを09年12月までに返済することで合意した。一方、同行は昨年10月、13年までに保険部門や資産運用部門を分離し、事業規模を大幅に縮小して再建を目指す方針を表明。欧州委は11月に同行の再建計画を承認したが、向こう3年間、または政府からの資本注入を全額返済するまで合併・買収や価格競争を禁止することなどに加え、ハイブリッド資本の期限前償還に関して事前に欧州委の承認を得ることを条件としていた。

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INGは総額12億ユーロ(利率8.439%を含む)に上るハイブリッド資本の初回コールを2010年12月31日に設定しており、オランダ政府が11月16日付で欧州委にコールの権利行使を認めるよう申請していた。欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)は声明で「INGは政府からの資本注入を全額返済するまでハイブリッド資本を償還することはできない。これは公的資金による救済策に対して銀行と個人投資家に相応の負担を負わせ、公平性を維持するための措置だ」と説明している。

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