2010/12/20

総合 –EUウオッチャー

EU版IMFを13年6月に創設、EU首脳会議で正式合意

この記事の要約

EU27カ国は16、17日にブリュッセルで開いた首脳会議で、財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う恒久的な制度を設けることで正式合意した。2013年6月に創設する。正式名称が「欧州安定メカニズム(ESM)」とな […]

EU27カ国は16、17日にブリュッセルで開いた首脳会議で、財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う恒久的な制度を設けることで正式合意した。2013年6月に創設する。正式名称が「欧州安定メカニズム(ESM)」となる同制度は、EU版の国際通貨基金(IMF)と呼べるもの。ギリシャに端を発した信用不安の拡大が懸念される中、1999年のユーロ導入以来、最大の機構改革を行い、信用不安の封じこめを図る。

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EUは5月、ギリシャに対してIMFと協調して向こう3年間で総額1,100億ユーロの緊急融資を行うことを決定した。さらに同月には、ギリシャ危機が飛び火してデフォルト(債務不履行)に陥りかねない国が出た場合に備えて、IMFと共同で総額7,500億ユーロのユーロ防衛基金を創設。11月末には支援第1号として、アイルランドに総額850億ユーロの緊急融資を実施することを決めたばかりだ。

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ユーロ防衛基金は期間3年間の時限措置で、13年6月に期限が来るため、EUは将来発生するユーロ圏の信用危機に備え、常設的な支援基金の創設を決めた。基金の規模など詳細は、2011年3月までに欧州委員会およびユーロ圏財務相理事会が詰めるが、採択された声明では「ユーロ圏全体の安定を守るために不可欠」な場合に「厳しい条件のもとで」支援を行うとしている。支援要請国は、ギリシャとアイルランドがEU、IMFから融資を受けた際と同様に、厳しい財政赤字削減策の実行を求められるもようだ。また、ESMではユーロ防衛基金と異なり、支援対象国の国債を持つ民間投資家にも、必要に応じて金利減免など一定の負担を求める。

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同日の首脳会議では、ESM創設に向けて、EUの基本条約である「リスボン条約」を改正することでも合意した。現行ルールではユーロ参加国間の直接救済が禁じられているためで、関連条項を修正して法的問題がないようにする。加盟国が2012年末までに条約改正を批准し、13年1月に発効させる運びとなる。

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一方、ESM創設までの危機対応として、EU議長国ベルギーが7,500億ユーロのユーロ防衛基金の増額を提唱したほか、ルクセンブルクなどがユーロ参加国による共同債券発行構想を打ち出している。アイルランドに続いてポルトガル、スペインなど財政悪化国が支援を求めることを想定したものだ。しかし、今回の首脳会議ではドイツの強い反対を受け、本格的な協議は行われなかった。ただ、EUのファンロンパイ大統領(首脳会議常任議長)は「ユーロ圏安定のため必要なことは何でもやる用意がある」とコメント。ユーロ圏財務相会合の議長を務めるルクセンブルクのユンケル首相兼財務相も「これらの問題は今後数週間にわたって検討されるだろう」と語っており、必要に応じて増額などが検討される可能性があるもようだ。

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