2011/2/7

総合 –EUウオッチャー

金融安定基金拡充で原則合意、3月の首脳会議で決定へ

この記事の要約

EU27カ国は4日にブリュッセルで開いた臨時首脳会議で、ユーロ圏の包括的な信用不安対策について協議し、総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」を拡充することで原則合意した。詳細は3月24-25日の首脳会議 […]

EU27カ国は4日にブリュッセルで開いた臨時首脳会議で、ユーロ圏の包括的な信用不安対策について協議し、総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」を拡充することで原則合意した。詳細は3月24-25日の首脳会議で決定する。また、これに連動してドイツとフランスがユーロ圏各国の経済政策の協調策を提案。これについては同月の首脳会議に先立つユーロ圏特別首脳会議で協議する。

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EFSFは深刻な財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う「ユーロ防衛基金」の中核。これまでに支援が発動されたのはアイルランドだけだが、ポルトガル、スペインなど財政不安を抱える南欧諸国が支援を要請する事態に備えて、基金の拡充を求める声が強まっていた。

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同基金は総額4,400億ユーロだが、債券発行によって資金を調達する際に有利となるよう高格付けを保つため、2,000億ユーロを準備金として計上しており、実際に使える金額は2,500億ユーロにとどまっている。基金拡充の具体化に向けては、4,400億ユーロすべてを融資に使えるようにする案が有力だ。また、基金を弾力的に運用し、◇国債による資金調達が困難な国の国債を直接買い取る◇ギリシャなどが発行済みの国債の一部を買い戻すための資金を供与する――ことなどが検討される見通しだ。

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一方、ドイツとフランスの共同提案は、基金拡充について負担が増すとして難色を示していた両国が、容認の見返りとして他のユーロ圏参加国に受け入れを迫っているもの。財政規律や財政再建の強化による信用不安問題の解消、競争力の強化を目的としたものだ。具体的には◇債務の上限を憲法に明記する◇年金受給開始年齢の引き上げ◇物価上昇率に連動した賃上げ制度の廃止◇法人税の最低税率導入――などが柱となっている。

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同案をめぐっては、オーストリアが年金受給年齢引き上げ、物価上昇率に連動した賃上げ廃止について、国によって事情が違い、EUレベルで規制できるものではないとして反発。最低税率導入には、法人税率を低くして外国企業を誘致しているアイルランドの反発が必至など、多くの国が主権侵害として抵抗するのは確実だ。ユーロ圏17カ国は3月上旬に同問題について協議するが、まとまるかどうか不透明な状況だ。

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