2011/2/28

産業・貿易

露首相がエネルギー供給網の分離政策を非難、欧州委員長との会談で

この記事の要約

欧州委員会のバローゾ委員長は24日、ブリュッセルでロシアのプーチン首相と会談し、EU・ロシア間で懸案となっているエネルギー政策について協議した。プーチン首相はEUが生産部門を持つ大手電力・ガス会社に対し、送電網やパイプラ […]

欧州委員会のバローゾ委員長は24日、ブリュッセルでロシアのプーチン首相と会談し、EU・ロシア間で懸案となっているエネルギー政策について協議した。プーチン首相はEUが生産部門を持つ大手電力・ガス会社に対し、送電網やパイプラインを直接管理することを禁止する新たな規制の導入を計画していることに強い懸念を表明。新ルールがEU域外の企業にも適用された場合、ロシアのエネルギー企業は「財産没収」によって深刻なダメージを受けると指摘し、EU側に同国の政府系独占ガス企業ガスプロムが規制の対象となることは容認できないとの立場を明確に伝えた。バローゾ委員長はこれに対し、新規制は世界貿易機関(WTO)協定に沿ったもので、EU市場で活動するすべての企業に適用されると明言。両者の間に歩み寄りはみられなかった。

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EUエネルギー市場は2007年7月に完全自由化されたが、その後も多くの国で少数の大手企業による実質的な独占状態が続いている。このため欧州委員会はさらなる自由化促進策として、大手電力・ガス会社に供給部門の完全な売却(オーナーシップ・アンバンドリング)、または独立した第3者に輸送網の運営を委ねて競合他社への送電網やガスパイプラインの開放を義務付けることを柱とする「第3次エネルギー・パッケージ」を提案。最終的には事業分離を強制した場合、域内エネルギー企業の国際競争力が低下してガスプロムなどの買収ターゲットになりかねないため、一定の条件の下でパイプラインなどの保有を認めるべきだとする英仏などの主張が通り、 09年7月に自国企業に供給部門の売却を義務付けるか、条件付きで保有を認めるかの最終判断を各国政府に委ねるとした規制案が採択された。

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プーチン首相は会議後の会見で「ロシアのエネルギーが欧州の繁栄を支えている」とコメント。3月に施行される新規制がEU域外の企業にも適用された場合、ロシアから欧州に天然ガスを輸送しているパイプラインが複数の中小事業者によって分割管理されることになり、運営コストがかさんで価格上昇につながると警告した。

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これに対し、バローゾ委員長は「第3次エネルギー・パッケージはWTO協定に合致しており、正式に承認された法律だ」と説明。「EU域内の企業やノルウェーの企業と同様、ロシアの企業にも適用される」と述べ、ルール変更の余地はないことを強調した。

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