2011/3/21

産業・貿易

銀行ストレステストの概要発表、重要部分は未定

この記事の要約

EU各国の銀行監督当局を統括する欧州銀行監督機構(EBA)は17日、新たに実施する域内の銀行に対するストレステスト(健全性審査)の概要を発表した。各国の経済成長が予想を大幅に下回り、マクロ経済が急激に悪化した場合を想定し […]

EU各国の銀行監督当局を統括する欧州銀行監督機構(EBA)は17日、新たに実施する域内の銀行に対するストレステスト(健全性審査)の概要を発表した。各国の経済成長が予想を大幅に下回り、マクロ経済が急激に悪化した場合を想定し、それでも各銀行が十分な自己資本などを確保できるかどうかを厳しく審査する。ただ、どれだけの自己資本があれば「合格」とするかという肝心の部分は固まっておらず、なお調整が必要な状況だ。

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EUが信用不安対策の一環として、域内91銀行を対象として昨年7月に実施した1回目のストレステストでは、「不合格」となった銀行は7行にとどまったが。ところが、合格と判断されたアイルランドの銀行がその後に資本不足に陥り、同国が「ユーロ防衛基金」から緊急融資を受ける事態に追い込まれた。このため査定基準の甘さを指摘する声が強く、次回のテストでは基準を厳格化して行うことが決まった。

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すでに着手している2回目のテストでは域内の銀行資産の65%を握る銀行が対象となるが、対象銀行の具体名、数は不明。報道では88行と伝えられている。EBAは近く対象銀行を公表するとしている。

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前回のテストでは、厳しい市場環境の中で各銀行が中核的自己資本を十分に確保できているかどうかが基準となった。今回は資本水準に加えて、新たに資金流動性や、国債が債務不履行(デフォルト)に陥るリスク(ソブリンリスク)も勘案して厳密にチェックする。

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自己資本については、今後2年間に経済環境が悪化しても十分な中核的自己資本(Tier1)を確保できるかどうかを審査する。環境悪化のシナリオとしては、EUの成長率が今年はマイナス0.4%、来年がゼロ%となることを想定。さらに今年については、◇ドル相場が主要通貨に対して11%値下がり◇欧州の株価が15%値下がり――という想定も含まれている。成長率についてはEUの最新予測を4ポイント下回る水準に設定。3ポイント下回る場合を想定していた前回と比べて、厳しい基準となっている。

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ただ、最大の焦点となる「十分な中核的自己資本」の定義が決まっておらず、何パーセントであれば合格とするかは未定。前回は6%を合格ラインとしていた。これについてもEBAが調整を進めた上で、近く公表する予定だ。

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ソブリンリスクに関しては、国債が債務不履行(デフォルト)に陥ることまでは勘案せず、EBAはポルトガルとスペインの国債相場がそれぞれ20%、15%下落する場合を想定しているとされるが、この下落率は市場の予想より控え目な水準で、甘さが指摘されている。

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EBAは今回のテストの結果を6月に公表する予定。

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