2011/4/4

総合 –EUウオッチャー

出生率改善も高齢化に歯止めかからず=欧州委の人口統計リポート

この記事の要約

欧州委員会が1日公表したEU27カ国の人口統計リポートによると、域内では引き続き出生率が改善傾向にあるものの、65歳以上の人口が毎年約200万人のペースで増えており、このまま高齢化が進めば2060年には年金受給者1人を就 […]

欧州委員会が1日公表したEU27カ国の人口統計リポートによると、域内では引き続き出生率が改善傾向にあるものの、65歳以上の人口が毎年約200万人のペースで増えており、このまま高齢化が進めば2060年には年金受給者1人を就労者2人で支えなければならなくなることが明らかになった。

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欧州委は加盟国が人口構成の変化をさまざまな政策に反映させることができるよう、隔年で人口統計リポートをまとめている。今回は初めてEU統計局ユーロスタットと共同で調査を実施し、出生率や平均寿命などの基本データに加え、域内における人口移動や域外からの人口流入についても詳細なデータを提供している。

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まず出生率をみると、EU諸国では1980年代から2000年代初頭にかけて急速に下落した後、03年からは一貫して改善傾向が続いており、女性1人が生涯に産む子供の数の推計値は03年の平均1.47人から08年は1.6人に増加した。国別ではルクセンブルク、マルタ、ポルトガルを除くすべての国で出生率が上昇しており、アイルランド、フランス、スウェーデン、英国では女性1人が生涯に産む子供の数はほぼ2人となっている。しかし、域内の人口水準を維持するにはこの数値が全体で2.1人を超えていなければならず、リポートは現在のペースで推移した場合、EUでは2050-60年の間に人口が減り始めると警告している。

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一方、団塊世代が現役引退の時期を迎え、今後さらに高齢化が進むことから、各国政府は年金制度を見直す必要に迫られている。現在は就労者4人で年金受給者1人を支えているが、このまま65歳以上の人口が増え続けた場合、50年後には就労者2人で年金受給者1人を支えなければならなくなる。欧州委は「高齢化は将来の問題ではなく、すでに起きている問題だ」と強調し、各国政府は定年延長などの具体策を早急に検討する必要があると指摘している。

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平均寿命はほぼすべての加盟国で伸びる傾向が続いており、平均すると1年につき2-3カ月のペースで長寿化が進んでいる。08年時点の平均寿命は男性が平均76.4年、女性は82.4年となっている。

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また、リポートによると、年間100-200万人が域外からEU諸国に流入しており、60年にはこうした移民とその家族が現在の2倍に拡大する見通し。一方、EU域内での人口移動をみると、EU市民の5人に1人が仕事、学業、結婚などのために自国以外のEU諸国で生活していることが分かった。さらに今回の調査では、EU市民の10人に1人が向こう10年間に他のEU加盟国への移動を計画していると答えている。

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