2011/4/4

環境・通信・その他

欧州委が運輸政策の新戦略、50年までにCO2排出6割削減へ

この記事の要約

欧州委員会は3月28日、EU域内における人や物の流動性を高め、成長と雇用促進につながる競争力のある輸送システムの構築に向けた新戦略「トランスポート 2050」をまとめた。原油の輸入に大きく依存する現行の輸送システムを変革 […]

欧州委員会は3月28日、EU域内における人や物の流動性を高め、成長と雇用促進につながる競争力のある輸送システムの構築に向けた新戦略「トランスポート 2050」をまとめた。原油の輸入に大きく依存する現行の輸送システムを変革し、運輸部門における二酸化炭素(CO2)排出量を2050年までに60%削減する方針を打ち出している。

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欧州委は50年を達成期限とする主な目標として◇ガソリンや軽油など、従来型の燃料を使用する自動車を都市部からなくす◇航空輸送における低炭素燃料の利用比率を40%まで引き上げる◇船舶からのCO2排出量を少なくとも40%削減する◇中距離(300キロメートル以上)の旅客および貨物輸送に関しては、道路輸送の50%を鉄道や水上交通に切り替える――の4項目を掲げ、それぞれ20年または30年までに達成すべき中間目標を設定している。戦略文書にはこのほか、20年までに域内における航空管制システムの近代化を完了し、58カ国の約10億人をカバーする「欧州共通空域」を形成することや、50年までに域内にあるすべての主要空港を高速鉄道網に接続すること、さらに20年までに交通事故による死傷者を半分に減らし、50年までに死亡事故をゼロにするなどの目標が盛り込まれている。

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欧州委のカラス委員は「『トランスポート 2050』は域内移動の利便性向上と、温室効果ガス削減につながる運輸政策を実現するためのロードマップだ。効率性や流動性を損なうことなく、石油に依存する輸送システムから脱却し、経済成長や雇用創出に不可欠な競争力のある新たなシステムを確立する必要がある」と強調。一連の施策には1兆5,000億ユーロ規模の資金が必要になるとの見通しを示した。

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産業界や環境団体からは新戦略の実効性を疑問視する意見が出ている。欧州自動車工業会(ACEA)のホダッチ事務局長は、中距離輸送の重点を道路輸送から鉄道と船にシフトする構想について、「利用者がその都度、最も効率的な輸送手段を選ぶという原則が損なわれる」と批判。中小企業経営者団体は政策減税など民間投資を促すための具体策が提示されていない点を問題視し、財政面から政策の実現は難しいとの見方を示している。一方、ブリュッセルに本拠を置く環境団体「トランスポート&エンバイロメント(T&E)」のディングス代表は、欧州委の打ち出した目標はいずれも20年以降を達成期限とする中長期のもので、ただちに成果が表れるような施策が盛り込まれていないと指摘。「実際には達成が困難なヘッドライン用の目標を掲げているにすぎない」と批判している。

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