2011/5/16

総合 –EUウオッチャー

ギリシャへの追加金融支援が不可避か、財政危機の深刻化で

この記事の要約

深刻な財政危機に陥っているギリシャをめぐり、EUが追加金融支援に踏み切るとの観測が急浮上している。同国は昨年5月にEUと国際通貨基金(IMF)から3年間で総額1,100億ユーロの協調融資を取り付けるとともに、財政再建に向 […]

深刻な財政危機に陥っているギリシャをめぐり、EUが追加金融支援に踏み切るとの観測が急浮上している。同国は昨年5月にEUと国際通貨基金(IMF)から3年間で総額1,100億ユーロの協調融資を取り付けるとともに、財政再建に向けて厳しい歳出引き締めを進めているが、信用不安が解消せず、国債発行による資金調達が困難な状況となっているためだ。

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ギリシャとドイツ、フランスなどユーロ圏主要国の財務相および欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁、欧州委員会のレーン委員(経済通貨問題担当)は6日、ルクセンブルクでギリシャ問題について協議。ユーロ圏財務相会合の議長国であるルクセンブルクのユンケル首相兼財務相によると、同国は財政再建計画の見直しが必要との見解で一致した。ただ、ギリシャはマイナス成長が続いているため税収増を期待できないことなどから、何らかの支援が避けられないとの空気が強まっており、これまでギリシャに厳しい姿勢を示してきたドイツも、融資返済条件の緩和または追加融資を容認する方向に傾いている。EUは近く同問題について協議するとみられる。

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ギリシャは緊縮への国民の強い反発などを背景に、財政再建が難航しており、2010年の財政赤字は国内総生産(GDP)比10.5%と、目標の8.1%を上回った。前週末には、財政再建が行き詰まったギリシャが最終手段としてユーロ離脱を検討しているとの報道が流れ、ギリシャ政府やEUが火消しに走る事態まで生じた。

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ギリシャが国債の保有者などに利払い減免などを求める債務再編に踏み切るとの見方もくすぶっている。ギリシャ政府やEUは否定しているが、市場では融資返済条件の緩和や追加支援では根本的な解決策とはならず、債務再編が必要とする声が多い。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は9日、ギリシャ国債の長期信用格付けを従来の「ダブルBマイナス」から2段階引き下げて「シングルB」としたが、これも債務再編のリスクが高まっていることが主因となった。

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