2011/6/13

環境・通信・その他

航空会社のCO2排出規制、欧州委が業界の見直し要求拒否

この記事の要約

温暖化対策の一環として2012年1月から新たに航空会社をEUの排出量取引制度(EU-ETS)に組み入れる計画をめぐり、航空業界と欧州委員会の攻防が激しさを増している。新ルールではEU内に乗り入れる域外の航空会社にも温室効 […]

温暖化対策の一環として2012年1月から新たに航空会社をEUの排出量取引制度(EU-ETS)に組み入れる計画をめぐり、航空業界と欧州委員会の攻防が激しさを増している。新ルールではEU内に乗り入れる域外の航空会社にも温室効果ガスの排出削減が義務付けられるため、とりわけ米国や中国が規制の見直しを求めてEUへの圧力を強めている。しかし、欧州委首脳は来年1月から計画通りに規制を実施すると明言しており、欧州航空業界からは新たな貿易紛争の勃発を懸念する声が上がっている。

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新システムではEU域内を離発着するすべてのフライトが規制の対象となり、域外の航空会社を含めたおよそ4,000社に温室効果ガスの排出削減が義務付けられる。米国や中国などの航空会社はこれに対し、EU法の域外適用は国際ルールに違反するとして反発を強めている。こうしたなか、欧州の主要航空会社が加盟する欧州航空協会(AEA)と航空機大手エアバスは先月、欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)に書簡を送り、現在の形のまま新ルールが導入された場合、EUと米中などの間で貿易紛争に発展し、EU企業が報復の対象になる恐れがあると指摘。規制の見直しを求めている。

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ロイター通信によると、欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)は6日、AEAとエアバスのトップに文書を送り、「国家や地域連合が法制化の権利を放棄すれば、それは極めて危険な信号になる。問題は気候変動にとどまらず、さまざまな分野で欧州企業に影響が及ぶ可能性がある」と警告。加盟国が合意したルールを撤回すればEU の弱みになるとして、規制の見直しには応じられないとの立場を強調した。さらに同委員は国際航空運送協会(IATA)が2004年に米政府に提出した文書で、「排出目標の達成手段として、新たな課税より排出量取引制度の方が66%-75%少ないコストで済む」と試算していた点に触れ、IATAの支持を受けて航空会社をEU-ETSに組み入れることを決めたと説明している。欧州委の関係者によると、同委員は外部からの圧力に屈して規制を撤回または緩和した場合、EUの環境政策全般に対して域外からの批判が高まる事態を最も懸念しているという。

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一方、欧州委のバローゾ委員長も8日の会見で「航空会社をEU-ETSに組み込む計画はもはや提案ではなく、加盟国が全会一致で合意し、欧州議会の承認を経て成立した法律だ。したがって、法律を変更する可能性についてはまったく考えていない」と明言。新規制を撤回したり、導入を遅らせる可能性を全面的に否定した。

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