2011/6/13

環境・通信・その他

大腸菌感染、原因はモヤシと特定

この記事の要約

欧州でドイツを中心に腸管出血性大腸菌O104の感染が拡大している問題で、ドイツ保健当局は10日、同国北西部ニーダーザクセン州のビーネンビュッテルにある有機農場が生産したモヤシを感染源と特定し、同農場を閉鎖したと発表した。 […]

欧州でドイツを中心に腸管出血性大腸菌O104の感染が拡大している問題で、ドイツ保健当局は10日、同国北西部ニーダーザクセン州のビーネンビュッテルにある有機農場が生産したモヤシを感染源と特定し、同農場を閉鎖したと発表した。国立ロベルト・コッホ研究所(RKI)が同日、モヤシが感染源である可能性が高いとの見解を示していたが、これを裏付ける疫学的証拠を特定するため、連邦リスク評価研究所(BfR)が再検査を行ったうえで、正式に公表した。

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RKIによると、問題の有機農場では5月上旬に従業員3人が下痢などの体調不良を訴えていた。感染はこの頃から広まり始めていたとみられるが、なぜモヤシが汚染されたかは今のところ不明。種に菌が付着していたか、農場の水に問題があったことなどが考えられるが、後者の場合、現時点では出荷制限を受けていない周辺の他の農場にも影響が及んでいる危険もある。RKIのブルガー所長は、汚染されたモヤシはすでに消費されたか廃棄されたとみられるものの、感染が完全に収束したわけではなく、「当面、モヤシは食べないように」と呼びかけている。

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一方、バール独保健相は「最悪の状況は脱したとみられる」と発言。感染源が特定されたことから、新たに感染者が急増する可能性は低下したとみられている。感染による死者数は、11日の時点で33人、感染者は約3,100人に上る。この大腸菌は「極めて特異なタイプ」(WHO)で、新種との見方もある。成人女性に感染が多いが、理由は分かっていない。

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 RKIおよびBfR、独連邦消費者保護・食品安全庁は、感染者が食事をした26の飲食店から農場までを追跡調査。当局は5日に感染源がモヤシである疑いを明らかにしていた。しかし、回収したモヤシから菌が検出されなかったため、翌日これを撤回した。最終的に感染源の特定に至ったモヤシは、ノルトライン・ヴェストファーレン州のケルン近郊にある感染者の自宅のごみ箱から見つかったもの。この家に住む3人のうち、2人が感染していた。

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農家への補償問題も焦点に

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感染源がほぼ特定された時点で、EU域内ではキュウリ、トマト、レタス、ズッキーニ、ピーマンの5種の野菜に対して出されていた「生で摂取しないように」との警告が解除された。欧州産野菜の輸入禁止措置を実施しているロシアも、すでに解除の意向を表明している。欧州委は8日、当初感染源とされたスペインのキュウリ生産者などをはじめ、自主回収や出荷停止、風評被害で多大な影響を受けた域内の農家に対し、今月末までに補償金の支払いを行う方針を明らかにした。補償には総額約2億1,000万ユーロをEU予算から充てることを提案しており、14日に正式決定される見通しだ。市場価格の50%を補償するとしているが、実際の被害額は提案されている額の2倍以上になるとも指摘されている。

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