2011/6/20

産業・貿易

産休延長問題が暗礁に、加盟国が欧州議会案を拒否

この記事の要約

EU加盟国は17日開いた雇用・社会問題担当相理事会で、女性労働者に与えられる完全有給での出産休暇期間を延長する法案について協議したが、合意に至らず。秋以降に決着を持ち越した。欧州議会は法定産休期間を現在の最低14週間から […]

EU加盟国は17日開いた雇用・社会問題担当相理事会で、女性労働者に与えられる完全有給での出産休暇期間を延長する法案について協議したが、合意に至らず。秋以降に決着を持ち越した。欧州議会は法定産休期間を現在の最低14週間から20週間に延長する法案を可決しているが、理事会はコスト負担の増大を懸念する英国などの反対で承認を拒否した。今後は9月からEU議長国を務めるポーランドが欧州議会および欧州委員会との交渉にあたることになる。ただ、加盟国の一部からは妥協点を見出すことは難しいとして審議を打ち切るべきだとの意見も出ており、法案の行方は不透明だ。

\

問題となっているのは、EUが1992年に採択した「妊娠中または最近出産した労働者の安全及び健康の改善を促進するための指令」の改正案。域内の女性労働者に産前・産後に連続した14週間の出産休暇を取得する権利を保証した現行規定に対し、欧州委員会は法定産休期間を国際労働機関(ILO)の勧告に沿って最低18週間としたうえで、雇用主に休暇中の全期間にわたり給与の100%支給を義務付けることを柱とする改正案を提示。これに対して欧州議会は昨年10月、産休期間を欧州委の原案より長い20週間に延長する修正案を可決した。

\

欧州議会の修正案をめぐっては、企業の経営環境が依然として厳しく、加盟国の財政もひっ迫していることを理由に、当初から加盟国や経済界が難色を示しており、昨年12月の雇用担当相会議でも英国やドイツを含む大多数の国が反対に回った経緯がある。修正案をまとめたポルトガル選出のエストレラ欧州議員は、再び理事会で承認が見送られたことに遺憾の意を表明。そのうえで、最近の世論調査ではEU市民の78%が出産休暇を20週間に延長する欧州議会の提案を支持していると強調し、「次期議長国ポーランドと協力してバランスのとれた妥協点を探りたい」と述べた。

\