2011/6/20

産業・貿易

VCにも登録制導入、欧州委が検討

この記事の要約

欧州委員会はEU域内で活動するベンチャーキャピタル(VC)を対象に登録制を導入し、単一ルールに基づいて監督・監視する規制案の策定を進めている。ヘッジファンドとプライベート・エクイティ・ファンドについてはEUが昨年採択した […]

欧州委員会はEU域内で活動するベンチャーキャピタル(VC)を対象に登録制を導入し、単一ルールに基づいて監督・監視する規制案の策定を進めている。ヘッジファンドとプライベート・エクイティ・ファンドについてはEUが昨年採択した「オルタナティブ投資ファンドマネジャー指令(AIFM指令)」に基づき、2013年から「パスポート」と呼ばれる登録制度が導入されることになっているが、これとは別にVC向けの新たなパスポート制度を創設する案などが検討されている。欧州委は関係する各方面から意見を聞き、年内に法案をまとめる方針を示している。

\

AIFM指令に基づいて創設されるパスポート制度は、ヘッジファンドなどが域内の1カ国で審査に合格すると他の加盟国でも自動的に登録され、域内全域で活動できる仕組み。EUの定める要件を満たすことを条件に、15年以降は域外に籍を置くファンドにも同制度が適用される。ファンドは投資方針や運用手法、リスク管理システムなどの情報を開示し、登録した国の当局に資産状況や活動内容を報告する義務を負う。このほか同指令には資産規模に応じてファンドに資本金の積み増しを義務付けたり、投機性の高いファンドの運用を制限できる権限を当局に与えることなどが盛り込まれている。

\

AIFM指令はVCもカバーしており、ヘッジファンドなどと同様にパスポート制度が適用されるが、登録が認められるためには自己資本比率など厳しい条件を満たさなければならず、規模の大きなごく一部のVCを除いて審査に合格するのは極めて困難。欧州委はヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドと異なり、VCが金融システム全体に影響を及ぼすシステミックリスクを引き起こす可能性は極めて低いと指摘し、AIFM指令の定める要件は中小のVCにとって厳しすぎるとの認識を示している。

\

業界側からはVC向けに新たな登録制度の創設を求める声が高まっており、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)などによると、欧州委もこの方向で法制化の作業を進めているもよう。もう1つの可能性としては、AIFM指令を改正して新たにVCを対象とするルールを盛り込む案が浮上している。

\