2011/7/11

環境・通信・その他

温効ガス削減目標引き上げが暗礁、欧州議会は決議案否決

この記事の要約

欧州議会は5日の本会議で、2020年を達成期限とするEUの温室効果ガス削減目標を条件付きで1990年比20%から30%に引き上げるとの決議案を否決した。欧州緑の党会派が提出した「30%削減」の決議案に対し、中道右派系会派 […]

欧州議会は5日の本会議で、2020年を達成期限とするEUの温室効果ガス削減目標を条件付きで1990年比20%から30%に引き上げるとの決議案を否決した。欧州緑の党会派が提出した「30%削減」の決議案に対し、中道右派系会派が米国や中国など他の主要排出国がEUと同等の取り組みを公約することが条件になると主張。まず、「条件付き」で目標を30%に引き上げるとの修正案が承認されたが、最終的にこの修正決議案は賛成258票、反対347票、棄権63票で不採択となった。

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EUは20年までに温室効果ガスを1990年比で20%削減する目標を掲げ、米国や中国など主要排出国の取り組みに応じて目標を30%まで引き上げる方針を打ち出している。欧州委員会や英国、フランス、ドイツなどはEUが温暖化対策で世界の主導権を握るため、30%の削減を目指すべきだとの立場だが、石炭火力に依存するポーランドなどが難色を示している。

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欧州委は経済危機に伴う生産活動の停滞で予想以上に温室効果ガスの排出量が減り、20%の削減は容易に達成できる状況にあると指摘。さらに高い目標を設定して環境技術への投資を促すことがEU経済の活性化につながると説明している。しかし、産業界ではEUだけが高い削減目標を設定した場合、中国やインドなど新興国との競争で不利な立場に立たされるといった批判が根強く、特に製鉄やガラスなどの重工業分野は無条件で削減目標を引き上げることに強く反発している。

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欧州議会の決議に拘束力はないが、欧州緑の党会派はこうしたEU内での議論を踏まえ、削減目標の引き上げを支持する政治的メッセージとして今回、「30%削減を目指す」との決議案を提出した。これに対し、産業界寄りの立場を取る中道右派系会派が「条件付き」の文言を追加する修正案を提示。賛成326票、反対317票のわずか9票差で修正案が承認された。しかし、最終的にはより厳しい目標設定が必要と考える緑の党会派などの温暖化対策推進派と、たとえ条件付きでも削減目標を30%に引き上げることに難色を示す慎重派が反対票を投じ、修正決議案は不採択となった。

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