2011/7/11

環境・通信・その他

米航空業界がEUを提訴、CO2規制域外適用は「国際法違反」

この記事の要約

EUが2012年1月からの導入を計画している航空業界に対する温室効果ガスの排出規制をめぐり、米国の航空会社が加盟する米航空輸送協会(ATA)は5日までに、EU司法裁判所に同措置の無効化を求めて提訴した。EUのルールを一方 […]

EUが2012年1月からの導入を計画している航空業界に対する温室効果ガスの排出規制をめぐり、米国の航空会社が加盟する米航空輸送協会(ATA)は5日までに、EU司法裁判所に同措置の無効化を求めて提訴した。EUのルールを一方的に域外の航空会社に適用するのは国際法に違反すると主張している。中国の航空業界もEUに対する反発を強めており、域内の航空会社からはEUと米中などによる新たな通商紛争の勃発を懸念する声も出ている。

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新システムでは原則として域内の空港を発着するすべてのフライトが規制の対象となり、域外の航空会社を含めた約4,000社にEU排出量取引制度(EU-ETS)に基づく排出削減が義務付けられる。

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08年のEU指令に基づき、初年度の12年は業界全体で04-06年の年間排出量の97%に当たる2億1,289万2,052トン、13年以降は95%に当たる2億850万2,525トン分の二酸化炭素(CO2)排出枠が各社に配分され、上限を超えた場合は排出量取引市場で排出枠を購入するか、制裁金を支払わなければならない。また、各社は初年度に排出枠のうち15%分をオークションで購入することが義務付けられる。

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ATAはEU法の域外適用は国際ルールに違反すると主張し、国際間の合意に基づいて温室効果ガスの排出削減を進めるべきだとの考えを示している。ATAの主任弁護士デリック・ワイアット氏は記者団に対し、EUの新規制ではロシア上空を飛行する日本の航空会社やカナダ上空の米国の航空会社など、域外の航空会社によるEU管制空域外での飛行も規制の対象となり、「第3国の領空権を侵害するものだ」と厳しく批判した。

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EU側はこれに対し、航空業界を対象とする新たな規制は国際法を完全に順守しており、EU加盟国と欧州議会によって承認された法律を撤回することはないとの立場を強調している。欧州委員会のヴァレーロラドロン報道官は「EUには域内の空港を発着する航空機を規制する権限があり、EU法の域外適用にはあたらない」と述べた。

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