2011/7/25

産業・貿易

欧州委がバーゼル3に基づく自己資本規制案を発表、違反行には制裁金も

この記事の要約

欧州委員会は20日、金融システムの安定化を目的とした域内銀行に対する新たな自己資本規制案を発表した。2019年までに国際的に業務展開する主要行に適用される新たな資本規制「バーゼル3」を基に、自己資本比率のほか流動性につい […]

欧州委員会は20日、金融システムの安定化を目的とした域内銀行に対する新たな自己資本規制案を発表した。2019年までに国際的に業務展開する主要行に適用される新たな資本規制「バーゼル3」を基に、自己資本比率のほか流動性についても域内共通の基準を定め、違反した銀行に年間売上高の最大10%の制裁金を科すという内容。米国では主要20行が自己資本規制の対象であるのに対し、EUでは域内のおよそ8,200の銀行に新ルールが適用される。欧州議会と閣僚理事会の承認を経て実施する。

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バーゼル3は銀行の普通株と内部留保で構成する狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を7%以上とすることを求めている。欧州委はこれに基づき、コアTier1比率を現在の2%から15年までに4.5%、19年までに7%に引き上げることを提案している。

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一方、先の金融危機では多くの銀行で資金流動性が枯渇した反省を踏まえ、厳しいストレス下でも流動性を維持できるレベルの流動資産の保有を義務付ける。具体的には15年末までに流動性カバレッジ比率(CRL)の基準を設定し、各行に18年までの達成を求める。さらに欧州委は自己資本に対する他人資本(有利子負債等)の割合を示すレバレッジ比率に関しても、共通基準を設定して規制を行う方向で検討を進める方針を示している。

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規制案にはこのほか、銀行に対する監視を強化するため各国の金融当局の権限を拡大し、たとえばEU全体で実施するストレステストの他に国ごとに審査を行うことができるようにすることや、企業統治(ガバナンス)強化に向けて内部告発制度を導入することなどが盛り込まれている。さらに各銀行に対し、格付け会社の信用格付けに依存することなく、独自の査定結果に基づいて投資先などを決定するよう求めている。

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欧州委によると、域内銀行が新規制の基準を満たすには19年までに4,600億ユーロの増資が必要となる。これによって域内総生産(GDP)は最大0.49ポイント押し下げられるものの、金融危機の再発リスクが大幅に軽減され、最終的には年間0.3~2ポイントのGDP押し上げ効果が期待できると試算している。

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欧州委のバルニエ委員(域内市場担当)は「欧州経済と市民生活に深刻な打撃を与えた金融危機を二度とくり返すことはできない。域内で活動する8,000以上の銀行に新たな自己資本規制を適用するのはそのためだ。昨年11月の20カ国・地域(G20)首脳会議での合意内容を法案として具体化したのはEUが初めてであることを強調したい」と述べた。

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