2011/9/5

産業・貿易

EUがシリア産原油の輸入停止、制裁措置を再強化

この記事の要約

EUは2日開いた外相理事会で、反政府デモへの武力弾圧を続けるシリアのアサド政権への経済制裁を強化することで合意し、3日付けで同国産原油に対する禁輸措置を発動した。原油および石油関連製品の購入と輸入、輸送のほか、これらに関 […]

EUは2日開いた外相理事会で、反政府デモへの武力弾圧を続けるシリアのアサド政権への経済制裁を強化することで合意し、3日付けで同国産原油に対する禁輸措置を発動した。原油および石油関連製品の購入と輸入、輸送のほか、これらに関連する金融・保険サービスの提供を禁止する。また、資産凍結・渡航禁止の制裁対象リストに新たに4人と3機関を追加した。

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EUは今年5月以降、アサド大統領をはじめ政権幹部らを対象とする制裁措置を実施し、段階的に強化してきたが、シリアの産業界を直接の対象とした制裁は今回が初めて。追加制裁にあたっては、医薬品や食料の輸送、外国人のシリア国外への避難など、人道目的の活動は資産凍結の対象から外すことも決定した。一方、米国が先月から実施している対シリア投資の禁止と同様の措置は見送った。

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シリアは日量15万バレルの原油を輸出しており、その約95%がEU加盟国向け。主にドイツ、イタリア、フランス、オランダに輸出している。最大の輸出先であるEUとの取引が停止することで、外貨収入が大幅に減少する。同国政府は近い将来に、今年3月時点で保有していた170億ドルの外貨準備を使い切ってしまう可能性もある。ただ、禁輸措置の即時実施に難色を示したイタリアが例外的に11月中旬までの輸入継続を認められたことや、イランがシリアに資金援助を行っているとの観測もあることなどから、今回の追加制裁にどれだけの実効性があるかは不透明だ。

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昨年のシリアの歳入に占める石油収入の割合は約28%。欧州委のクランシー報道官(通商担当)によれば、2010年の同収入は31億ユーロ程度だった。EUが同年に輸入した原油の総量に占めるシリア産原油の割合は、1.5%にとどまっている。

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体制崩壊のリビアには制裁を一部解除

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EU は2日、カダフィ政権が崩壊したリビアへの経済制裁を一部解除した。6つの港湾当局に加え、石油・ガス関連企業10数社、銀行・金融機関数社、国営航空会社など、28の企業・機関が対象。独裁体制の崩壊を受け、新たな政権作りを急ぐ反カダフィ派の国民評議会を支援するのが目的だ。

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また、サルコジ仏大統領とキャメロン英首相の呼びかけで1日にパリの大統領府で開催された「支援国会議」では、カダフィ政権が国外に保有していた500~1,100億ドルの資産のうち、150億ドルの凍結を解除、リビアの復興資金に充てることが決まった。

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会議にはEU主要国や米国をはじめ、約60の国と機関が参加。リビア国内の秩序回復や復興財源の確保など、具体的な支援の内容について協議が行われたもよう。国民評議会のアブドルジャリル議長は新憲法制定や選挙の実施、カダフィ派による報復への対応など、民主国家への移行に向けての方針を示したとみられる。

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