2011/9/12

総合 –EUウオッチャー

欧州中銀が利上げ終了か、インフレより景気対策優先で

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は8日の定例政策理事会で、ユーロ圏17カ国に適用される最重要政策金利を現行の年1.5%に据え置くことを決めた。トリシェ総裁は記者会見で、インフレより景気見通し悪化の懸念を強調したことから、市場ではE […]

欧州中央銀行(ECB)は8日の定例政策理事会で、ユーロ圏17カ国に適用される最重要政策金利を現行の年1.5%に据え置くことを決めた。トリシェ総裁は記者会見で、インフレより景気見通し悪化の懸念を強調したことから、市場ではECBが利上げ局面に終止符を打ち、利下げに動くとの見方が広がっている。

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ユーロ圏では今年に入って、原油価格の高騰を背景にインフレ率が急上昇し、ECBは4、7月に各0.25%の利上げを実施した。それでもインフレ率が許容水準を超えていることから、先月までは利上げ局面が続くと目されていた。

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しかし、トリシェ総裁は理事会後の記者会見で、「ユーロ圏経済は緩やかに成長するとみている」としながらも、「不透明感が強まっており、下振れリスクが大きい」と述べ、景気の先行きへの懸念を表明。物価動向に関しては、「(インフレ・リスクの)バランスが概ねとれている」と述べた。物価上昇の懸念を前面に打ち出した先月までの姿勢から一転した格好だ。

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ユーロ圏では4-6月期の成長率が前期比0.2%と、前期の0.8%から急減。信用不安の拡大に対する懸念が強まり、下期は一層の減速が必至となっている。一方、インフレ率は8月に2.5%と、ECBが上限目標値とする2%を上回っているものの、一時の急上昇には歯止めがかかっている。

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ECBは同日公表した内部経済予測で、ユーロ圏の2011年の予想成長率を1.6%とし、前回(6月)の1.9%から大幅に下方修正。12年の予想成長率も1.7%から1.3%に引き下げた。一方、インフレ率は11年に2.6%と上限目標値を超えるが、12年には1.7%に低下すると予想している。

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独コメルツ銀行のエコノミスト、シューベルト氏は今後の金融政策について、トリシェ総裁が記者会見で現行金利を「なお緩和的だ」と述べたことに注目し、当面は利下げより量的緩和の拡大で景気を下支えし、状況が急激に悪化すれば利下げを検討すると予想する。これに対して、市場では早ければ来月にも利下げに踏み切るとの観測も出ている。

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