2011/9/26

環境・通信・その他

航空会社の排出規制、業界コストは11億ユーロ

この記事の要約

金融情報サービス大手トムソン・ロイターのエネルギー・環境市場関連情報サービス部門ポイントカーボンは19日公表したリポートで、2012年から航空部門がEUの排出量取引制度(EU-ETS)に組み込まれた場合、業界全体で約11 […]

金融情報サービス大手トムソン・ロイターのエネルギー・環境市場関連情報サービス部門ポイントカーボンは19日公表したリポートで、2012年から航空部門がEUの排出量取引制度(EU-ETS)に組み込まれた場合、業界全体で約11億ユーロ(排出権価格を12ユーロ/トンで試算)のコスト負担を強いられるとの予測を明らかにした。特に英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は最も多い約5,000万ユーロの追加コストが必要になる見通し。燃料費全体からみれば追加コストの比率はさほど大きくないものの、国際航空運送協会(IATA)は2011年の航空業界の利益を世界全体で30億ユーロ程度と見積もっており、新たな規制が航空各社の収益を圧迫することは間違いなさそうだ。

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EUが来年1月から導入する新ルールでは、原則として域内の空港を発着するすべてのフライトが規制の対象となり、域外の航空会社を含めた約4,000社にEU-ETSに基づく排出削減が義務付けられる。初年度の12年は業界全体で04-06年の年間排出量の97%に当たる2億1,289万2,052トン、13年以降は95%に当たる2億850万2,525トン分の二酸化炭素(CO2)排出枠が過去の排出実績に応じて各社に配分され、排出量が上限を超えた場合は排出量取引市場で排出権を購入するか、制裁金を支払わなければならない。また、各社は排出枠の一部を取引市場で購入しなければならず、欧州委は今月末に航空会社ごとの排出枠と無償配分の比率を公表する方針を示している。

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ポイントカーボンによると、EU域内の大手航空会社はそれぞれ必要とする排出枠のうち平均81%が無償配分で賄われるのに対し、米国と中国の主要航空会社はこの割合がそれぞれ63%、64%にとどまる見通し。一方、航空業界専門のコンサルティング会社RDCアビエーションによると、新規制に伴う航空会社の負担増が航空運賃に転嫁された場合、たとえばロンドン~ニューヨーク便の値上げ幅はデルタ航空の0.14ユーロに対し、BAは1.66ユーロに上ると試算している。

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航空部門をEU-ETSに組み込む計画をめぐっては、EUのルールを一方的に域外の航空会社に適用するのは国際法に違反するとして、米国や中国などが反発を強めている。米国の航空会社が加盟する米航空輸送協会(ATA)は7月、EU司法裁判所に同措置の無効化を求めて提訴。中国でもEUに対する批判が高まっており、域内の航空会社からはEUと米中などによる新たな通商紛争の勃発を懸念する声も出ている。

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