2011/10/10

環境・通信・その他

域外航空会社への排出規制適用は合法、欧州裁が米の無効化要求却下

この記事の要約

欧州司法裁判所は6日、EU内に乗り入れる域外の航空会社への温室効果ガス排出規制の適用は国際法に違反しないとの法務官見解を明らかにした。同措置の無効化を求めて提訴した米国の航空会社と業界団体の主張には正当性が認められないと […]

欧州司法裁判所は6日、EU内に乗り入れる域外の航空会社への温室効果ガス排出規制の適用は国際法に違反しないとの法務官見解を明らかにした。同措置の無効化を求めて提訴した米国の航空会社と業界団体の主張には正当性が認められないとの判断を示したもの。法務官の見解は裁判所の最終判断に反映される公算が大きいため、EU側は今回の動きを歓迎している。しかし、米国のほか中国、ロシア、インドなどはEUに対する反発を強めており、欧州航空業界からはEUと米中などによる新たな通商紛争の勃発を懸念する声が出ている。

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EUは2012年1月から航空部門をEU排出量取引制度(EU-ETS)に組み込むことを決めており、域外の航空会社を含めた900社以上に同制度に基づく温室効果ガスの排出削減が義務づけられる。

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スキームに参加する航空各社は過去の実績を基に割り当てられる排出枠のうち15%を取引市場で購入することが義務づけられ、実際の排出量が上限を超えた場合は超過分の排出権を購入するか、制裁金を支払わなければならない。新たな規制の導入によってほとんどの航空会社が多大なコスト負担を強いられるのは確実で、追加コストの一部は運賃値上げなどの形で利用者に負担が転嫁されるとみられている。

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米ユナイテッド・コンチネンタル航空、アメリカン航空と米航空輸送協会(ATA)は7月、EUルールの域外適用は国際民間航空条約(シカゴ条約)をはじめとする国際法に違反すると主張し、新規制の無効化を求めてEU司法裁に提訴した。米側はEUルールが適用された場合、たとえばカナダ上空の米国の航空会社など、域外の航空会社によるEU管制空域外での飛行もすべて規制の対象となり、第3国の領空権を侵害するなどと主張している。

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ココット法務官は米側の主張に対し、シカゴ条約などの慣習国際法は主権の範囲や管轄権限の制限について定めたもので、特定の締約国の権利や利益を保護するための法的根拠にはなりえないと指摘。「EU-ETSに域外の航空会社を組み込む計画は、引用された国際法の条文および原則に適合している」と結論づけた。

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欧州委員会のヘデゴー委員(気候変動担当)は「EU指令が完全に国際法に合致しているとの法務官見解が出たことを歓迎する」とコメント。一方、ATAは法務官の見解に「失望した」との声明を出し、EU法の域外適用は国際ルールに違反するとの主張を繰り返した。米国務省の担当官も「域外の航空会社にEUの排出規制を適用する構想に対し、法律および政策面から引き続き抗議する」と明言。他の国と連携してEU側に規制の見直しを強く求める方針を示した。さらに国際航空輸送協会(IATA)首脳は「インドなどはEUの排出規制が適用された場合、EUに対して報復措置を取る姿勢をみせている」と指摘。国際的な通商紛争に発展する事態への強い懸念を表明した。

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航空部門をEU-ETSに組み込む計画をめぐっては、中国とロシアの航空当局が先月27日、「シカゴ条約など国際法に違反しており、主権侵害にあたる」などとする共同声明を発表した。また、インドの民間航空省によると、9月末にニューデリーで開かれた航空関係者の会合で、米・中・露・印など20カ国以上がEUの新規制に反対する共同宣言への署名に合意したという。

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