2011/10/10

環境・通信・その他

通信網開放順守に向けた対応強化、欧州委が作業開始

この記事の要約

欧州委員会は3日、EU域内の大手通信会社に固定電話およびブロードバンド通信網の開放を義務付けたEUルールについて、完全な順守に向けた規制のあり方を検討する作業に着手したと発表した。各国で通信網を所有・運営する大手通信会社 […]

欧州委員会は3日、EU域内の大手通信会社に固定電話およびブロードバンド通信網の開放を義務付けたEUルールについて、完全な順守に向けた規制のあり方を検討する作業に着手したと発表した。各国で通信網を所有・運営する大手通信会社が自社の優位性を維持するため、他社による回線へのアクセスを阻害して新規参入を妨げていないか、さらに大手通信会社が他社に回線を貸与する際の回線使用料を各国当局がどのように規制しているかの2点について意見を募集して実態を把握し、具体策を検討する。11月28日まで通信事業者、消費者団体、規制当局、各国政府など各方面から意見を受け付け、EU各国の規制当局による対応に一貫性を持たせるための指針をまとめる。

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EUは2020年に向けた情報通信技術(ICT)分野の総合戦略「デジタルアジェンダ」で高速インターネット網の整備を優先課題の1つに掲げている。しかし、通信網の開放ルールに関する各国当局の解釈や対応にばらつきがあるため、通信会社は長期的な収益予想や事業計画を立て難い状況に置かれており、結果的に高速インターネット網の構築に向けた投資を遅らせる要因になっている。欧州はこうした現状を踏まえ、域内における規制のばらつきを解消して、大手通信会社に光ファイバー網整備への投資を促したいと考えている。

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欧州委のクルース副委員長(デジタルアジェンダ担当)は3日にブリュッセルで開かれた欧州電気通信事業者協会(ETNO)主催の会合で講演を行い、大手通信会社が他社に回線を貸与する際の料金に新たな規制を設けて値下げを促す一方、光ファイバー網への大規模な投資を確約した事業者に対しては回線使用料の値下げを免除するシステムの導入を提案した。大手通信会社は回線使用料を引き下げればブロードバンドサービスが値下げされることになり、消費者は既存サービスに満足して光ファイバーの導入に関心を持たなくなるなどと主張し、新たな料金規制に強く反発している。クルース副委員長はこうした言い分にも理解を示したうえで、「銅線ベースの通信網から光ファイバー網への移行を促す新たな仕組みを模索したい」と語った。

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