2011/10/31

産業・貿易

企業の社会的責任強化を提案、資源開発など対象に

この記事の要約

欧州委員会は25日、企業の社会的責任の強化に向けた一連の施策を提案した。鉱物や森林などの資源開発にかかわる、いわゆる採取業者から資源産出国に流れる資金を把握するため詳細な報告を義務付けることや、エクイティ・スワップを利用 […]

欧州委員会は25日、企業の社会的責任の強化に向けた一連の施策を提案した。鉱物や森林などの資源開発にかかわる、いわゆる採取業者から資源産出国に流れる資金を把握するため詳細な報告を義務付けることや、エクイティ・スワップを利用して秘密裏に株式の取得を進める「持分の隠蔽(ヒドゥン・オーナーシップ)」を規制することなどを内容としている。

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資源産出国における腐敗や紛争を予防し、持続可能な資源開発を促進するためには、採取業者から資源産出国政府への資金の流れの透明性を確保することが重要となる。こうした認識のもと欧州委は透明性指令と会計指令を改正し、企業が資源産出国政府に対して支払った税金、ロイヤルティー、利益配当金などについて、国別報告書(CBCR)の作成を義務付けることを提案した。対象となるのは、石油や天然ガス、金属鉱物や森林などの資源の開発にかかわるEUの約600社の上場あるいは非上場企業。欧州委の提案は、米国で昨年成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)の規定に内容的に類似しているが、鉱物資源の採取業者だけでなく森林伐採業者にも対象を広げたことと、非上場企業も対象にしている点が特徴だ。

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ヒドゥン・オーナーシップは、仏高級ブランドコングロマリット、モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)が昨年10月、同じく仏高級ブランドのエルメスの株式を買い増した時にクローズアップされた。これは、エクイティ・スワップなどを用いて経済的持分と議決権持分を切り離し、経済的持分を保有しながら議決権持分を持たない状態を意図的に作り出す手法で、大量保有報告書による情報開示を回避できるため、ヘッジファンドやライバル企業が相手企業の経営改革や買収などを仕掛ける際、秘密裏に株式の取得を進めることが可能になる。欧州委は、LVMHがエルメスの株式を17.1%に買い増した際にエクイティ・スワップを利用して「エルメスとマーケットに気付かれずに株式を取得した」と指摘。こうした手法は、市場濫用につながる危険性があるとして、上場企業の株式の取得に利用できる金融商品を大量所有している場合は報告を義務付けることを提案した。

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