2011/11/21

環境・通信・その他

旅客情報提供に関する対米新協定に仮調印

この記事の要約

欧州委員会は17日、EU域内から米国に向かう旅客情報の提供に関する米国との新協定に仮調印したと発表した。米当局によるデータ保持期間を一部短縮するなど、現行協定の見直し求めるEU側の主張に沿って乗客のプライバシー保護を強化 […]

欧州委員会は17日、EU域内から米国に向かう旅客情報の提供に関する米国との新協定に仮調印したと発表した。米当局によるデータ保持期間を一部短縮するなど、現行協定の見直し求めるEU側の主張に沿って乗客のプライバシー保護を強化する内容になっている。欧州議会とEU閣僚理事会の承認を経て「旅客名記録(Passenger Name Record=PNR)」に関するEU・米間の新協定が発効する。

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米国は2011年9月の同時多発テロ以降、国内を離発着する航空会社に旅客情報の提供を義務づけており、EUも04年5月、域内から米国に向かう旅客機の乗客について氏名、住所、座席番号、クレジットカード番号、飛行ルートなどの情報を米当局に報告することを航空会社に義務付ける協定を結んだが、欧州議会は同協定がEUのデータ保護指令に違反するとして欧州司法裁判所に提訴。欧州裁は06年5月、欧州議会の主張を認め、協定を無効とする判決を言い渡した。

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これを受けてEUと米国は07年7月末を有効期限とする暫定的な協定を結んだ上で、情報提供の範囲や目的などについて見直しを進め、07年7月26日、新たに7年間有効な協定を締結。米側に提供する個人情報の項目を大幅に減らすことや、情報提供から7年が経過したデータは「休眠データ」として扱い、特別な手続きを踏まなければアクセスできなくすることなどで合意した。しかし、欧州議会はプライバシー保護に対する懸念から、昨年5月に協定の見直しに向けた再交渉を求める決議を採択。閣僚理が欧州委に交渉権限を付与することで合意し、同委と米政府の間で協議が続いていた。

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新協定によると、米国土安全保障省(DHS)は航空会社から提供された旅客情報をEUの捜査および司法当局と共有しなければならない。また、旅客情報の利用目的がより明確に規定されており、当局はテロ犯罪および3年以上の禁錮刑が適用される重大な越境犯罪(人身売買や麻薬取引など)に関連した捜査や訴追という目的の順守が義務付けられる。一方、米側に提出された個人の氏名や連絡先などのデータは提供から6カ月後にすべて匿名化され、休眠データとなるまでの期間も現在の7年から5年に短縮される。さらにテロ犯罪に関連した個人情報のデータ保持期間は最大15年で据え置かれるが、それ以外の越境犯罪についてはデータ保持期間の上限が10年に短縮される。このほか新協定は乗客がDHSに提供された個人情報にアクセスして訂正・削除したり、個人情報が不正に利用された場合に米国の法律に基づいて法的救済を受ける権利などを保障している。

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欧州委のマルムストロム委員(内務担当)は「昨年12月の交渉開始から一貫して個人情報保護が最優先の課題だった。この点で新協定は大きく前進しており、交渉の結果に満足している。安全保障に関するEUと米国の合意を損なうことなく、EU市民のプライバシーを守ることができる」と強調している。

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