2011/12/27

総合 –EUウオッチャー

ハンガリー議会が財政安定化法案を可決、中銀改革法案も年内採決へ

この記事の要約

ハンガリー議会は23日、個人所得税の税率を一律16%とすることなどを柱とする財政安定化法案を賛成多数で可決した。一方、中央銀行総裁の権限縮小などを盛り込んだ中銀改革法案については修正案が承認され、年内に採決が行われる見通 […]

ハンガリー議会は23日、個人所得税の税率を一律16%とすることなどを柱とする財政安定化法案を賛成多数で可決した。一方、中央銀行総裁の権限縮小などを盛り込んだ中銀改革法案については修正案が承認され、年内に採決が行われる見通し。EUと国際通貨基金(IMF)はハンガリーへの金融支援に関する協議開始の条件として、同国政府に両法案の見直しと採決の延期を強く求めていたが、オルバン政権は議会の大多数を占める与党フィデス・ハンガリー市民連盟の後押しを受けて独自路線を強行する構えをみせている。

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政府は財政安定化法を通じて「予測可能な財政赤字削減策」の実行が可能になり、雇用を創出して競争力強化を図ることができると強調している。しかし、財政関連法の改正には議会で3分の2以上の賛成が必要なため、一律16%の所得税率は実質的に固定される可能性が高い。欧州委員会とIMFは法案が成立した場合、将来的に柔軟な財政運営が困難になると指摘し、ハンガリーから要請のあった新たな金融支援に向けた協議に応じるための条件として、同国政府に採決の見送りを要求していた。

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一方、中銀改革法案は、総裁の権限を縮小して副総裁の任命権を首相と大統領に委譲するほか、政策金利を決定する委員会メンバーを現在の7人から最大9人に拡大することなどを柱とする内容。EUとIMFは中銀の独立性を脅かしかねない法律の制定を推し進めようとするハンガリー政府の姿勢を問題視し、今月半ばに同国から要請のあった金融支援に関する事前協議を中断。また、欧州委のバローゾ委員長は中銀法案と財政安定化法案がEU法に抵触している可能性があると指摘し、オルバン首相に撤回を求める書簡を送っている。こうした動きを背景に、修正案には政府が中銀の政策決定に介入しない旨の宣言が盛り込まれたが、オルバン首相は22日のテレビインタビューで、2つの法案はEU法に沿った内容であり、財政再建を進めるうえで不可欠な柱だと強調している。

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なお、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は21日、一連の法案審議が財政政策の透明性と信頼性に疑問を生じさせ、投資環境を悪化させているとして、ハンガリーの長期格付けを投資不適格にあたる「BBプラス」に引き下げた。

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