2011/12/27

環境・通信・その他

域外航空会社への排出規制「合法」、欧州裁が米の無効化要求を棄却

この記事の要約

EU内に乗り入れる域外の航空会社に温室効果ガス排出規制を適用することは国際法に違反するとして、米国の航空会社などが同措置の無効化を求めて提訴している問題で、欧州司法裁判所は21日、規制に違法性はないとの判断を下した。これ […]

EU内に乗り入れる域外の航空会社に温室効果ガス排出規制を適用することは国際法に違反するとして、米国の航空会社などが同措置の無効化を求めて提訴している問題で、欧州司法裁判所は21日、規制に違法性はないとの判断を下した。これにより、予定どおり2012年1月から航空部門がEU排出量取引制度(EU-ETS)に組み込まれることになる。

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新システムでは新たに域外の航空会社を含む900社以上が規制の対象となり、EU-ETSに基づく温室効果ガスの排出削減が義務づけられる。対象となる航空各社は過去の実績を基に割り当てられる排出枠のうち15%を取引市場で購入することが義務づけられ、実際の排出量が上限を超えた場合は超過分の排出枠を購入するか、制裁金を支払わなければならない。新たな規制の導入によってほとんどの航空会社が多大なコスト負担を強いられるのは確実で、排出権の購入費用は20年までに業界全体で90億ユーロに膨らむとの試算がある。

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米ユナイテッド・コンチネンタル航空、アメリカン航空と米航空輸送協会(ATA)は今年7月、EUルールの域外適用は領空主権を定めた国際民間航空条約(シカゴ条約)をはじめとする国際法に違反すると主張し、新規制の無効化を求めてEU司法裁に提訴した。米側はEUルールが適用された場合、たとえばカナダ上空を飛行する米国の航空機など、域外の航空会社によるEU管制空域外での飛行もすべて規制の対象となり、第3国の領空権を侵害するなどと主張していた。

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欧州裁は判決で、EUの規制は域外国の「主権や領空を侵害するものではない」とし、「(シカゴ条約などの)慣習国際法やオープンスカイ協定とも矛盾しない」と判断した。欧州委員会のヘデゴー委員(気候変動担当)はこれを受けて声明を発表し、「裁判所が明確な判断を下した以上、米国の航空業界がEUのルールを尊重することを期待する」と強調。予定どおりに来月から航空部門に対する規制を導入する方針を改めて示した。

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航空業界に対するEUの規制をめぐっては、現在、米議会で国内の航空会社がEU-ETSに参加することを禁止する法案が審議されている。また、今月半ばにはクリントン国務長官とラフード運輸長官が連名でEU側に書簡を送り、規制の見直しに応じない場合は「対抗措置を講じることになる」と警告するなど、外交問題に発展する兆しを見せている。さらにEU・米間の係争とは別に、日本、インド、ロシア、中国などを含む26カ国は先月、国際的な合意を得ずに域外の航空会社にEUの規制を適用することは国際法に違反するとして、EUを提訴する方針を表明している。

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