2012/1/9

総合 –EUウオッチャー

ハンガリーで中銀改革法が成立、金融支援不透明で市場に警戒感

この記事の要約

ハンガリー議会は12月30日、中央銀行総裁の権限縮小などを柱とする中銀改革法案を賛成多数で可決した。また、1月1日付で施行された新憲法には憲法裁判所の権限縮小や、中銀と金融規制当局の統合を可能にする条文なども盛り込まれて […]

ハンガリー議会は12月30日、中央銀行総裁の権限縮小などを柱とする中銀改革法案を賛成多数で可決した。また、1月1日付で施行された新憲法には憲法裁判所の権限縮小や、中銀と金融規制当局の統合を可能にする条文なども盛り込まれており、公共機関やメディアに対する政府の影響力拡大を目指すオルバン政権の政策に内外から批判が集まっている。EUの欧州委員会は民主主義を損ない、中銀の独立性を侵す新法がEU法に抵触しないか調査を開始した。

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中銀改革法は総裁の権限を縮小して副総裁の任命権を政府に委譲し、副総裁を2人から3人に増やすことや、政策金利を決定する委員会メンバーを現在の7人から最大9人に増員することなどを柱とする内容。欧州中央銀行(ECB)は中銀の政策決定で政府の影響力が強まると指摘し、法案に強く反対していた。 一方、新憲法には中銀と金融規制当局を統合したうえで、シモール現中銀総裁を統合後の新機関の副総裁に降格させる構想などが盛り込まれている。

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EUとIMFは中銀の独立性を脅かしかねない新法の制定を推し進めようとするハンガリー政府の姿勢を問題視し、12月半ばに同国から要請のあった最大200億ユーロ規模の金融支援に関する事前協議を中断した。オルバン首相は年末に欧州委のバローゾ委員長に書簡を送り、少なくともシモール総裁の任期が満了する2013年3月までは中銀と規制当局を統合しない方針を伝えるなど、EUに理解を求めているが、現時点で協議再開のめどは立っていない。

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ハンガリーに対する金融支援の見通しが立たないなか、市場では同国の財政再建や資金調達の悪化を懸念する声が高まっている。フォリントは5日に対ユーロで史上最安値を更新。6日には大手格付け会社フィッチ・レーティングスがハンガリーの長期国債格付けを投機的水準の「BBプラス」に1段階引き下げた。すでにスタンダード・アンド・プアーズとムーディーズ・インベスターズ・サービスも同国国債の格付けを「投資不適格」としている。

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ハンガリーVAT税率、EU最高水準に

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ハンガリー政府は1月1日、財政再建策の一環として、付加価値税(VAT)の税率を現行の25%から27%に引き上げた。これにより同国のVAT税率は欧州連合(EU)内で最高水準となった。

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今回のVAT引き上げは一律ではなく、一般食品は18%、書籍・新聞は5%に据え置いた。

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ハンガリーは財政赤字の削減を進めており、VAT以外の増税も計画している。一連の措置により、今年の財政赤字をEUの財政規律で上限となっている国内総生産(GDP)比3%を下回る2.5%まで削減することを目指す。

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