2012/1/9

環境・通信・その他

中国航空業界が排出枠の購入拒否、提訴と報復措置を検討

この記事の要約

EUが今月1日から導入した航空部門を対象とする温室効果ガス排出規制をめぐり、中国航空運輸協会(CATA)は5日、排出量取引制度(EU-ETS)の適用によって生じる排出枠の購入義務を拒否する方針を表明した。EU域外の航空会 […]

EUが今月1日から導入した航空部門を対象とする温室効果ガス排出規制をめぐり、中国航空運輸協会(CATA)は5日、排出量取引制度(EU-ETS)の適用によって生じる排出枠の購入義務を拒否する方針を表明した。EU域外の航空会社を一方的にEU規制の対象とすることは国際法に違反するとして提訴を検討しているほか、EUに対して報復措置を講じるよう中国政府に求めていることを明らかにした。

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EUは2005年に導入したEU-ETSの適用を今月から航空部門に拡大。域内の空港を離着陸するすべての航空会社が二酸化炭素(CO2)の削減を義務づけられ、達成できなければ超過分を埋め合わせる排出枠を購入するか、制裁金を支払わなければならない。新たな規制の導入によってほとんどの航空会社が多大なコスト負担を強いられるのは確実で、排出枠の購入費用は2020年までに業界全体で90億ユーロに膨らむとの試算がある。

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中国国際航空など中国の主要4社が加盟するCATAの柴海波副秘書長は「当然ながら中国はEU-ETSに協力しない。CATAは国内の航空会社を代表して、域外の航空会社に一方的に同制度を適用したEUの不適切な行為に強く抗議する」と発言。「各社に義務づけられた排出枠の購入には応じない」と述べ、提訴を含む対抗措置を検討していることを明らかにした。CATAは新規制に伴う国内航空会社のコスト負担が今年は8億元(1億2,300万ドル)に達すると試算している。

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航空会社に対する温室効果ガス排出規制をめぐっては、EU司法裁判所が先月、国際的な合意を得ずに域外の航空会社にEUの規制を適用することは「国際法に違反する」などと主張していた米航空業界の訴えを退け、EUの措置は合法との判断を下している。このため、中国側が提訴しても決定が覆る可能性は低いが、米国が対抗措置を検討しているほか、日本、インド、ロシアなども新規制に強く反発しており、EU側に再考を求める声がさらに高まると予想される。

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一方、独ルフトハンザは2日、EU-ETSの適用に伴い今年は1億1,300万ユーロの追加費用が必要になるとの試算を示し、利用者に対して運賃の値上げに備えるよう求めた。新規制の導入後、大手航空会社が値上げを示唆したのは今回が初めて。同社は声明で「とりわけ排出量取引制度の影響が小さい域外の航空会社との激しい競争に直面し、新規制に伴う負担増を運賃に転嫁せざるを得ない」と強調。ただし、移行措置などを考えると実際にコスト負担が生じるのは13年以降とみられることから、ただちに値上げを実施することはないと説明している。

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