2012/2/27

環境・通信・その他

航空排出規制で23カ国が対抗措置、露はシベリア上空の飛行制限示唆

この記事の要約

EUが1月から導入した航空部門に対する温室効果ガス排出規制に反対する23カ国は21、22日、モスクワで会合を開き、EU域内の航空会社に対する飛行制限や新たな課税などの報復措置を含む対抗策を講じることで合意した。EUの規制 […]

EUが1月から導入した航空部門に対する温室効果ガス排出規制に反対する23カ国は21、22日、モスクワで会合を開き、EU域内の航空会社に対する飛行制限や新たな課税などの報復措置を含む対抗策を講じることで合意した。EUの規制をめぐっては、中国政府が国内の航空会社にEUのルールに従うことを禁止する方針を表明し、米国でも対抗法案が検討されるなど国際的な風当たりが強まっている。ロシアはEU国籍の航空会社に対してシベリア上空の飛行を制限する方針を示唆しており、規制に反対する他の国でも具体的な対抗策の検討が本格化するものとみられる。

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EUの新規制は排出量取引制度(EU-ETS)に基づいて域内の空港を離着陸するすべての航空会社に二酸化炭素(CO2)の排出削減を義務づけ、達成できなければ超過分の排出枠を購入するか、制裁金を支払うという内容。新規制導入によって大部分の航空会社が新たなコスト負担を強いられるのは確実で、国際航空輸送協会(IATA)は排出枠の購入費用が2020年までに業界全体で175億ユーロに達するとの見方を示している。

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今回の会合には日本、米国、中国、ロシア、インド、ブラジルなど26カ国が参加。うちカナダ、エジプト、カタールを除く23カ国が、8つの対抗措置を盛り込んだ「モスクワ宣言」に署名した。対抗措置には◇自国の航空会社によるEUのスキームへの参加禁止◇国際民間航空機関(ICAO)への苦情申立て◇路線新設や以遠権の拡大に関する交渉の打ち切り◇EU国籍の航空機に対する飛行制限◇EU国籍の航空機に対する新たな課税――などが含まれている。各国はこの中からそれぞれ自国の利益に適う措置を選ぶことができるが、当面はこうした報復措置を交渉材料に、反対国が一致してEUへの圧力を強めるものとみられる。

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ロシアのオクロフ運輸次官は会議後、「EUに対して引き続き規制の撤回または適用延期を求める方針を確認した」とコメント。そのうえで、ロシアとして自国の航空会社にEUのスキームへの参加を禁止すると共に、EU域内の航空会社に対してシベリア上空の飛行を制限し、代わりに日本や中国などアジアの航空会社を優遇する方向で検討を進める方針を示唆した。

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今回の動きに対し、欧州委員会のヘデゴー委員(気候変動担当)はツイッターで「残念ながら、モスクワでの会合でもEUの規制に代わる具体的かつ建設的な対案は示されなかった」と発言。EUと同等の対策を講じている国の航空会社については規制の適用を除外する規定を設けている点に触れ、反対国の圧力に屈して規制を撤回する考えがないことを強調した。

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