2012/3/26

産業・貿易

欧州議会の経済委、保険会社の新規制案承認

この記事の要約

欧州議会の経済委員会は21日、2013年1月に導入予定の域内の保険会社に対する新たな規制の枠組みを定めた指令案「ソルベンシーⅡ」を賛成多数で承認した。資本要件を一部緩和する措置が盛り込まれており、アナリストらは業界全体で […]

欧州議会の経済委員会は21日、2013年1月に導入予定の域内の保険会社に対する新たな規制の枠組みを定めた指令案「ソルベンシーⅡ」を賛成多数で承認した。資本要件を一部緩和する措置が盛り込まれており、アナリストらは業界全体で数十億ユーロ規模の負担軽減につながるとみている。来月にも欧州議会とEU加盟国の代表が協議して最終案をまとめ、7月に開く欧州議会本会議での採択を目指す。

\

ソルベンシーⅡは銀行に対する自己資本比率の最低基準を定めた新BIS規制に相当する保険分野の新ルールで、国際的に事業展開する保険会社に対して関係国の監督機関が連携して監視体制を強化し、グループ全体のリスクを正確に把握して金融市場の混乱を防止することを最大の目的としている。具体的には保険会社に一定以上のソルベンシーマージン(不測の事態が発生した場合でも契約通りに保険金を支払うための「余裕資金」のことで、広義の自己資本)の保有を義務付けることを柱とする内容で、リスク資産の評価技法やガバナンスに関する共通ルールなども盛り込んでいる。

\

経済委では賛成37、反対5で指令案が承認された。加盟国は保険業界の意向を反映した修正案の内容で合意していたが、欧州議会は消費者保護の観点から規制緩和に難色を示しており、当初は自己資本負担の軽減措置が削除されるとの見方が有力だった。しかし、業界団体などの強い働きかけで最終的に負担軽減措置を盛り込んだ修正案の採決が行われ、支持派が圧倒的多数を占めた。修正案には英国、スペイン、アイルランドなどで採用されている「マッチング・プレミアム」と呼ばれる年金保険の負債リスク評価手法や、主にドイツで導入されている補外法と呼ばれる金利の変動予測方法を引き続き容認することなどが盛り込まれている。

\

域内の保険会社はソルベンシーⅡの施行から1年以内の完全実施が求められる。業界内では自己資本規制の強化によって欧州の保険会社が国際競争力を失う事態を懸念する声が依然として根強い。その一方、これ以上法制化プロセスが長期化すれば資本要件をめぐる不確定要素が増し、深刻な投資家離れを引き起こすといった指摘もある。英国保険協会(ABI)のソレセン事務局長は今回の動きを受け、「完璧からは程遠いが、建設的な議論のための土台は整った」とコメント。今後の協議では新ルールが域内の保険会社の競争力を損なうものにならないよう、最終的な調整を進めなければならないと指摘している。

\