2012/4/23

産業・貿易

EUがアルゼンチンと対立、スペイン石油会社の国有化めぐり

この記事の要約

アルゼンチン政府がスペインの大手石油会社レプソル傘下のYPFを国有化する方針を打ち出したことに対し、EU内で同国の保護主義的な政策に対する批判が高まっている。ロイター通信によると、スペイン政府関係者は18日、EUに対して […]

アルゼンチン政府がスペインの大手石油会社レプソル傘下のYPFを国有化する方針を打ち出したことに対し、EU内で同国の保護主義的な政策に対する批判が高まっている。ロイター通信によると、スペイン政府関係者は18日、EUに対して世界貿易機関(WTO)にアルゼンチンを提訴するよう求める方針を明らかにした。EUは23日に外相会議を開いて対応策を協議する方針だが、アルゼンチン側が強硬姿勢を貫いた場合、本格的な通商紛争に発展する可能性がある。

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アルゼンチンのフェルナンデス大統領は16日、天然資源の管理を強化する政策の一環として、政府がYPFの株式51%を取得する計画を発表した。18日には上院委員会が同社を国有化するための法案を承認し、25日に上院本会議での採決が予定されている。欧州委員会のバローゾ委員長は今回の動きに対し、「アルゼンチン当局が国際的な取り決め、とりわけ投資家保護に関するスペインとの2国間協定を順守することを強く求める」とコメント。同委のアーレンキルデ=ハンセン報道官は「EUが取り得るあらゆる選択肢を検討する」と付け加えた。

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YPFはもともと国営企業だったが、1990年代に段階的に民営化され、現在はレプソルが同社の株式57.4%を保有している。アルゼンチンでは90年代後半から石油や天然ガスの生産量が減少傾向をたどっており、液化天然ガス(LNG)などの燃料輸入が大幅に拡大して貿易収支の悪化を招いている。フェルナンデス大統領はレプソルがYPFへの投資を怠ったことが同社の生産低迷につながったと批判し、国内産業を保護するためにも再国有化が不可避との考えを示した。

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フェルナンデス政権は2008年にスペインの旅行会社マルサンスの傘下にあったアルゼンチン航空を国有化するなど、これまでも保護主義的な動きをみせていた。今年2月には国内の輸入業者などに対し、取引の内容を事前に公共歳入連邦管理庁に登録することを義務づける輸入許可制度を導入。日米欧などが同国への批判を強めている。

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EUではリスボン条約の発効に伴い、加盟国による対外投資も共通通商政策の一環としてEUの管轄事項になった。しかし、数千件に上る2国間協定をすべてEUと相手国の協定に置き換える作業には、なお数年を要するのが実情。このため今回の事案では、レプソルおよびスペイン政府はアルゼンチンとの投資協定に基づき、自力で解決策を模索しなければならないとの見方が有力だ。一方、アルゼンチンに対する対抗措置として、輸入許可制度がWTOルールに違反するとしてEUが同国を提訴する可能性も指摘されている。

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