2012/4/23

産業・貿易

銀行資本規制で加盟国の溝埋まらず、資本上積みが焦点に

この記事の要約

EU加盟国は19日開いた大使級会合で、バーゼル銀行監督委員会の新規制「バーゼルⅢ」を基にした域内銀行に対する新たな自己資本規制について協議したが、資本バッファー(資本の上積み)の導入や中核的自己資本(コアTier1)の定 […]

EU加盟国は19日開いた大使級会合で、バーゼル銀行監督委員会の新規制「バーゼルⅢ」を基にした域内銀行に対する新たな自己資本規制について協議したが、資本バッファー(資本の上積み)の導入や中核的自己資本(コアTier1)の定義をめぐって意見が分かれ、合意に至らなかった。バーゼルⅢの段階的導入が始まる2013年1月の新ルール実施に向け、5月初めに財務相会議を開いて引き続き検討する。

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欧州委員会は昨年7月、普通株と内部留保で構成するコアTier1比率を7%以上とすることなどを求めたバーゼルⅢに基づき、自己資本比率のほか流動性についても域内共通の基準を定め、違反した銀行に制裁金を科すことなどを柱とする規制案をまとめた。しかし、英国やスウェーデンは各国の金融当局に最低基準を高く設定できる裁量権を与えるべきだと主張し、域内共通の基準を求めるフランス、イタリア、オーストリアなどと対立。事態の打開を図るため、EU議長国デンマークは先月、国内の銀行に対して最大3%の「システミックリスク・バッファー」と呼ばれる資本の上積みを課す権限を各国当局に与える妥協案をまとめた。しかし、英国などがなお不十分として難色を示したため、今回新たに15年から資本バッファーの上限を5%に引き上げる案を提示した。

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大使級会合では英国などが資本バッファーに関してより一層の弾力性を求めたほか、一部の国が普通株以外の証券についても一定の条件を満たしたものについてはコアTier1とみなすべきだと主張したのに対し、バーゼルⅢの厳格な運用を求める英国が強く反対したもよう。さらに自己資本に対する他人資本(有利子負債等)の割合を示すレバレッジ比率の開示義務に関しても、フランスやドイツなどが3年先送りして18年からの導入を主張するなど、足並みの乱れが浮き彫りになった。

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会議に出席したある外交官は「合意に近づくことはできなかった。依然として課題が山積している」とコメント。議長国デンマークから5月2日に財務相会議を招集する方針が伝えられたことを明らかにした。

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