2012/5/7

産業・貿易

銀行の自己資本規制、財務相理で合意できず

この記事の要約

EU加盟国は2日開いた財務相理事会で、バーゼル銀行監督委員会の新規制「バーゼルⅢ」を基にした域内銀行に対する新たな自己資本規制について協議したが、各国当局が自国の銀行に資本の上積みを課す際の裁量権をめぐって調整がつかず、 […]

EU加盟国は2日開いた財務相理事会で、バーゼル銀行監督委員会の新規制「バーゼルⅢ」を基にした域内銀行に対する新たな自己資本規制について協議したが、各国当局が自国の銀行に資本の上積みを課す際の裁量権をめぐって調整がつかず、議論は平行線をたどった。議長国デンマークを中心に加盟国の意見集約を図り、15日に開く次回会合での合意を目指す。

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EUは普通株と内部留保で構成する狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率を7%以上とすることなどを定めたバーゼルⅢに沿って域内共通ルールを制定し、バーゼルⅢの段階的導入が始まる2013年1月に合わせて新規制を導入することを目指している。欧州委員会は昨年7月、自己資本比率のほか流動性についてもEU共通の基準を定め、違反した銀行に制裁金を科すことなどを柱とする規制案をまとめた。しかし、英国などは各国の金融当局にEU基準より高い自己資本比率を設定できる裁量権を与えるべきだと主張。デンマークは3月、自国の銀行に最大3%の「システミックリスク・バッファー」と呼ばれる資本の上積みを課す権限を各国当局に与える妥協案を提示したが、英国が引き続き難色を示したため、最終的に資本バッファーの幅を最大5%とする線で調整が進められている。

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財務相理で英国は、各国の金融当局が状況に応じて柔軟にマクロプルーデンスな規制を実施できるよう、資本バッファーに関してより一層の弾力性を持たせる必要があると主張。自国の銀行に対してEU基準を超える自己資本比率を義務づける場合、欧州委の承認を得なければならないとした手続き上のルールについても難色を示しているもようだ。

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デンマークのベステエア財務相は会議後、「銀行に対する新たな自己資本規制は金融危機から学んだ教訓を基にした最も重要なルールの1つだ」と強調。引き続き「技術的な作業」を進めて6月末までの議長国任期中に加盟国の合意形成を図りたい考えを示した。

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