2012/5/14

環境・通信・その他

携帯ローミング規制が決、7月から新ルール導入へ

この記事の要約

欧州議会は10日の本会議で、携帯電話をEU域内の他の国で利用する際にかかるローミング料金を引き下げる新たな規制案を賛成多数で可決した。動画や音楽をダウンロードする際にかかるデータローミングは、これまで事業者間のホールセー […]

欧州議会は10日の本会議で、携帯電話をEU域内の他の国で利用する際にかかるローミング料金を引き下げる新たな規制案を賛成多数で可決した。動画や音楽をダウンロードする際にかかるデータローミングは、これまで事業者間のホールセール料金のみが規制の対象になっていたが、新ルールが導入される今年7月1日以降はリテール料金にも上限が設けられる。音声通話やショートメッセージサービス(SMS)を利用する際にかかるローミング料金も、それぞれ上限が引き下げられる。欧州委員会は新たな規制の導入により、携帯電話のローミング料金は全体として5年前の4分の1程度に抑えられ、国内で利用する際の料金水準に近づくと説明している。

\

EUでは2007年6月に「携帯電話のローミングに関する規則」が制定され、それ以降、域内の他の国で音声通話やSMSを利用する際のローミング料金が段階的に引き下げられている。しかし、事業者の多くが規制の上限に近い料金を設定しており、依然としてローミングサービスから莫大な利益を得ているのが実情。欧州委は15年までに域内の他の国で携帯電話を使用する際の料金を国内料金とほぼ同等にするという目標を掲げ、現行規制が失効する今年7月以降の新ルールを提示。閣僚理と欧州議会で規制案について検討を進めていた。

\

モバイルインターネットを介したデータ利用にかかるローミング料金は、現在のところ国によって1メガバイト当たり2-5ユーロとばらつきがあるが、7月以降は最大0.7ユーロに制限され、13年7月は0.45ユーロ、14年7月には0.2ユーロに上限が引き下げられる。また、音声通話は発信時で現在の1分当たり0.35ユーロから7月以降は0.29ユーロ、13年7月からは0.24ユーロ、14年7月には0.19ユーロに上限が引き下げられる。さらにSMSは1件あたり0.11ユーロの上限が7月以降は0.09ユーロ、13年7月には0.08ユーロ、14年7月以降は0.06ユーロに引き下げられる。

\

欧州委の試算によると、ベルギーに住む4人家族がイタリアで1週間の休暇を過ごす場合、スマートフォンで通話、メール送信、検索、写真のアップロード、ソーシャルメディアのアカウントチェックなどのサービスを利用した場合の費用は45ユーロ程度で、同じサービスを3年前に利用したと仮定すると220ユーロ以上の節約になる。また、英国のビジネスマンが年間10回、3日間の日程でフランスやドイツに出張する場合、スマートフォンの利用料金は3年前と比べて年間で1,000ユーロ以上安くなる。

\

一方、携帯電話サービス会社は14年7月以降、ユーザーが域内の他の国で携帯電話を利用する際、最も低いローミング料金を設定している事業者を自由に選び、電話番号を変更せずにサービスを受けられる契約プランを提供することが義務づけられる。また、今年7月以降は自らの通信網を持たない事業者や国外の事業者にネットワークを開放しなければならない。

\

欧州委のクルース委員(デジタル政策担当)は「データローミングに価格上限を設けることで、スマートフォンの本格普及に向けた環境が整う。なにより、旅行先で携帯電話を利用した場合に天文学的な料金を請求されるといったケースがなくなる」と強調している。

\