2012/5/21

環境・通信・その他

昨年の温効ガス排出量は2%減、中印航空会社はデータ提出拒否

この記事の要約

欧州委員会は15日、今年1月からEU排出量取引制度(EU-ETS)の適用を航空部門に拡大したことに関連して、EU域内を発着する定期便を運行している航空会社のうち、中国とインドの計10社が4月末の報告期限までに温室効果ガス […]

欧州委員会は15日、今年1月からEU排出量取引制度(EU-ETS)の適用を航空部門に拡大したことに関連して、EU域内を発着する定期便を運行している航空会社のうち、中国とインドの計10社が4月末の報告期限までに温室効果ガスの排出状況に関するデータを提出しなかったことを明らかにした。欧州委は6月中旬までに2011年の排出実績を報告するよう求めており、従わない場合は制裁を検討する方針を示している。

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EUの新規制は過去の実績に基づいて航空各社に二酸化炭素(CO2)の排出枠を設定し、排出量が枠を超えた場合は超過分の排出権を市場で購入するか、制裁金の支払いを求めるという内容。実際に排出権の購入義務が発生するのは13年以降だが、新たな規制の導入によってほとんどの航空会社が新たなコスト負担を強いられるのは確実で、域外の航空会社にEUルールを適用するアプローチに対して国際的な批判が高まっている。

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欧州委が2010年の統計を基に試算したところ、報告書を提出していない中・印10社からのCO2排出量がEU内を発着する航空機全体に占める割合は3%以下にとどまる見通し。ヘデゴー委員(気候変動担当)は会見で「EU内の空港を利用する航空会社のうち、中国とインドを除くすべての企業から合わせて1,200以上の路線について排出データが提出された」と説明。中・印10社が運行する路線は全体の1%に満たないと指摘し、「ほぼ完全に近いレベルでEUルールが順守されている」と強調した。

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一方、欧州委が同日公表したリポートによると、EU-ETSの対象となっている約1万2,000カ所の事業所や発電所から2011年に排出された温室効果ガス排出量は、CO2換算でおよそ18億8,900万トンとなり、前年の水準を2%以上下回った。アナリストの予想では、景気回復やドイツの脱原発政策を背景とした火力発電の大幅な増加などにより、経済危機の影響で生産活動が停滞した2010年に比べてCO2排出量が増加するとの見方が有力だった。

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ヘデゴー委員は「欧州経済が拡大しているにもかかわらず、対象施設からのCO2排出量が前年比で2%以上減少したことは、排出量取引制度がコスト効率の良い温室効果ガス削減手段であることを明確に示している」と指摘。そのうえで、13年にスタートするEU-ETSの第3期間では各施設に割り当てる排出枠をさらに縮小する必要があるとの考えを示した。

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