2012/7/9

総合 –EUウオッチャー

ルーマニア議会が大統領の弾劾決議可決、EUは政治的混乱を懸念

この記事の要約

ルーマニアの議会は6日、バセク大統領の職務を停止する決議案を賛成多数で可決した。今月29日に大統領の信任を問う国民投票が予定されており、罷免賛成派が多数を占めればその後3カ月以内に大統領選挙が実施される。当面はポンタ首相 […]

ルーマニアの議会は6日、バセク大統領の職務を停止する決議案を賛成多数で可決した。今月29日に大統領の信任を問う国民投票が予定されており、罷免賛成派が多数を占めればその後3カ月以内に大統領選挙が実施される。当面はポンタ首相率いる中道左派・社会民主党(PSD)などと連立を組む国民自由党(PNL)のアントネスク党首が大統領を務める。

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世界的な金融危機で財政難に陥ったルーマニアはEUや国際通貨基金(IMF)の金融支援を受けながら財政再建を進めているが、付加価値税(VAT)の引き上げや公務員の給与削減などの緊縮策をめぐって国民の不満が高まっている。PSDなどは金融支援と引き換えに、厳しい緊縮政策を導入したバセク大統領の行為が「権力乱用」にあたると批判。ポンタ首相とバセク氏の対立が深まるなか、上下両院の合同会議では賛成256票、反対114票で大統領の職務停止を求める決議案が可決された。

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ルーマニアでは緊縮策をめぐる世論の強い反発を受け、バセスク氏に近い中道右派内閣が今年2月に退陣。5月にPSDを中心とする中道左派政権が発足した。しかし、ポンタ首相が書いた博士論文に盗用の疑いがあると報じた英科学誌ネイチャーの記事をめぐり、同国の専門委員会が6月末に盗用を認定する調査結果をまとめたことで、同首相に対する辞任要求が高まっている。こうした中でポンタ政権は今月に入り、上下両院の議長とオンブズマンを解任。さらに憲法裁判所の権限を縮小する命令を発動するなど、議会および司法への介入を加速させており、EUは同国の政治的混乱に懸念を強めている。

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こうした事態を受けて欧州委員会は6日、「ルーマニアにおける現在の状況、とりわけ憲法裁判所をはじめとする独立機関の権限を縮小する動きを憂慮している」との声明を発表。同委のバローゾ委員長が同日、ポンタ首相に強い懸念を伝えたことを明らかにした。

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