2012/7/23

総合 –EUウオッチャー

対スペイン金融支援が正式決定、市場の不安は収まらず

この記事の要約

ユーロ圏の財務相は20日に開いた電話協議で、スペインの銀行を救済するためのEUによる同国への金融支援を正式決定した。支援総額は最大1,000億ユーロ。各銀行に対するストレステスト(健全性審査)の完了を待って、具体的な支援 […]

ユーロ圏の財務相は20日に開いた電話協議で、スペインの銀行を救済するためのEUによる同国への金融支援を正式決定した。支援総額は最大1,000億ユーロ。各銀行に対するストレステスト(健全性審査)の完了を待って、具体的な支援額を決める。ただ、スペインでは財政危機拡大の不安が強まって国債利回りが急上昇しており、綱渡り状態が続きそうだ。

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EUは当面、財政危機に直面するユーロ参加国に対する緊急金融支援の枠組みである「欧州金融安定基金(EFSF)」を通じて、同支援を実施する。同基金に代わる恒常的な基金「欧州安定メカニズム(ESM)」の発足が遅れているためで、ESMは始動後に支援を引き継ぐ。

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支援はスペイン政府の銀行再編基金(FROB)経由で各銀行に注入する。個別の融資額は、政府が9月の完了をめどに実施する各銀行のストレステストの結果に基づいて決まるが、緊急事態に備えて月内に第1弾として300億ユーロをFROBに払い込む。

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同日の協議では、支援条件も決まった。融資の満期は平均12.5年。最長で15年となる。利率はEUが指定せず、スペイン政府の判断に委ねられるが、ギンドス経済相は4%を超えない水準になるとの見通しを示している。

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スペインの銀行は、2008年のリーマンショックに端を発した世界金融危機による不動産バブル崩壊で、巨額の不良債権を抱え込むことになった。ギリシャを震源地とする信用不安がスペインに飛び火したことでもあって銀行の経営が悪化し、多くの銀行が深刻な資金不足状態にある。財政危機に直面する政府による資金注入だけでは支えきれないことから、同国は6月にEUへの支援要請に踏み切った。

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EFSFから金融支援を受けるのは、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルに続き4カ国目。スペインの場合は、国債償還の資金を自力で調達できず、デフォルト(債務不履行)を回避するため支援を要請した他の3カ国とは異なり、銀行救済が目的であることから、追加の財政緊縮策実施といった条件は付かない。ただし、支援対象となる銀行は厳しい経営再建策の実施を迫られる。不良資産を「バッドバンク」と呼ぶ受け皿機関に切り離し、処理を進めることも求められる。

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スペインはEUによる金融支援が決まったものの、なお厳しい財政状況に直面している。同日には政府が、2013年の予想成長率を当初のプラス0.2%からマイナス0.5%に下方修正したと発表。また、財政悪化が深刻なバレンシア州政府が、中央政府が創設を決めた総額180億ユーロの地方自治体向け支援基金による緊急融資を要請した。さらに、ラホイ政権が先ごろ打ち出した付加価値税(VAT)増税を含む650億ユーロ規模の追加財政再建策に対する国民の反発が強まっており、19日には各地で緊縮策に反対する大規模デモが行われ、首都マドリードではデモ隊と警官隊が激しく衝突した。

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このため、政府が約束している財政再建策実施に対する不透明感が広がり、20日の債券市場でスペイン国債を売る動きが加速。10年物国債の利回りは危険水域とされる7%を超える水準まで上昇した。

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