2012/7/30

環境・通信・その他

欧州委が排出枠入札の一部延期を発表、需給調整で排出権価格下支え

この記事の要約

欧州委員会は25日、EU温室効果ガス排出量取引制度(EU-ETS)で2013年から本格導入されるオークション方式による排出枠の有償配分に関連して、排出枠の入札を一部延期する計画を発表した。景気低迷に伴う生産活動の停滞で排 […]

欧州委員会は25日、EU温室効果ガス排出量取引制度(EU-ETS)で2013年から本格導入されるオークション方式による排出枠の有償配分に関連して、排出枠の入札を一部延期する計画を発表した。景気低迷に伴う生産活動の停滞で排出枠に膨大な余剰が生じ、排出権価格が記録的な水準に下落していることが背景。排出権価格の下落傾向が続けば企業に低炭素技術への投資を促すことが困難になるため、EU-ETS第3期間(13-20年)の最初の3年間は競売にかける排出枠を減らし、16年以降に削減分を含めて入札を実施する「バックローディング」と呼ばれる手法を用いて排出枠の需給を調整する。具体的にどの程度の排出枠を保留するかについては現時点で3通りのオプションがあり、欧州委は年内に最終決定する方針を示している。

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EU-ETSの第1期間(05-07年)では全体の95%、第2期間(08-12年)でも90%の排出枠がグランドファザリング方式によって対象施設に無償で割り当てられてきたが、第3期間以降は段階的にオークションによる有償割当への移行を進め(発電部門は原則として100%オークション)、27年までに全面移行することが決まっている。初年度の13年は総排出枠の60%が有償割当となるが、債務危機に伴う景気の低迷で排出権価格は今年4月に1トン当たり5.99ユーロと史上最安値を記録。現在も6ユーロ台後半から7ユーロ台前半と低水準で推移している。企業に環境投資を促すには最低でも20ユーロの排出権価格を維持する必要があるとされるが、市場ではEU-ETSが計画通りに運用された場合、排出枠の余剰分が20年時点で14億トン超に達し、少なくとも今後5年以内に排出権価格が1トン当たり15ユーロを超えることはないといった試算があり、欧州委は排出権価格を下支えするための新たな施策を検討していた。

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当初の計画では13-15年の3年間におよそ35億トン分の排出枠がオークションで有償配分されることになっていたが、欧州委の構想によると、このうち一部の入札が16年以降に先送りされる。対象となる排出枠は4億トン、9億トン、12億トン分の3通りが想定されており、欧州委は各方面との協議を経て年内に最終決定する方針。ただし、第3期間全体では当初の計画通り、およそ85億トン分の排出枠が競売にかけられる。

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欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)は「排出量取引市場ではこのところ、排出枠の余剰が拡大している。このまま供給過剰の状態が続くことは好ましくない」と指摘。バックローディング方式でオークションのタイミングを調整することで、排出枠の需給バランスを改善し、排出権価格を安定させることができると説明している。

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