2012/8/27

環境・通信・その他

菜種油バイオ燃料、持続可能性基準を満たさず=独研究グループ

この記事の要約

米国の干ばつに端を発する穀物価格の高騰が進むなか、ドイツの研究チームはこのほど、欧州で生産される菜種油を原料とするバイオディーゼルは、EUが定めるバイオ燃料の持続可能性基準を満たしていないとの調査結果をまとめた。バイオ燃 […]

米国の干ばつに端を発する穀物価格の高騰が進むなか、ドイツの研究チームはこのほど、欧州で生産される菜種油を原料とするバイオディーゼルは、EUが定めるバイオ燃料の持続可能性基準を満たしていないとの調査結果をまとめた。バイオ燃料の生産は気候変動によって上昇した食料価格をさらに押し上げる要因となるため、持続可能性を否定する科学的データが公表されたことで、EU内ではバイオ燃料をめぐる政策の見直しを求める声が高まる可能性がある。

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EUは「再生可能資源エネルギー利用促進指令」(2009年6月施行)で、2020年までにEU全体のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を20%まで引き上げると共に、輸送部門におけるバイオ燃料を主体とする再生可能エネルギーの利用比率を10%とする目標を掲げている。生物由来の有機性資源を原料とするバイオ燃料は再生可能エネルギー資源の柱と位置付けられているが、大規模な農園開発に伴う森林破壊や食糧との競合による穀物価格の高騰などへの懸念から、持続可能性に配慮して生産されたバイオ燃料のみ域内で使用できると規定。持続可能性基準として◇化石燃料と比較した温室効果ガス削減率が35%以上であること(17年以降は削減率50%以上、18年以降の新規プラントで生産されるバイオ燃料は削減率60%以上が求められる)◇熱帯雨林や湿地帯など、生物多様性および炭素貯留の高い土地で生産された原料を利用していないこと――などを定めている。

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独イエナ大学の研究者2人が国内で生産された菜種油を原料とするバイオディーゼルの温室効果ガス排出量を調べたところ、10件のうち8件で化石燃料と比べた排出削減効果が持続可能性基準の35%を下回り、30%に満たないものが大半を占めた。域内におけるバイオディーゼルの使用量は2010年の1,000万トンから20年には2倍の1,995万トンに拡大するとみられているが、バイオディーゼルの利用促進には生産プロセスでの技術的改善などを通じた持続可能性基準の達成が前提条件となる。

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報告書をまとめたペーネルト博士は「今回の研究結果は菜種油の持続可能性について大いに疑問の余地があることを示唆している。欧州委員会はすべての研究データを公表したうえで、個々のバイオ燃料について改めて持続可能性を検証する必要がある」と指摘している。

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